カテゴリ:医療政策関連( 26 )
「医療政策国民フォーラム」各党マニフェスト検証会議開催
国民のための医療の実現を目指す民間会議「医療政策国民フォーラム」は、先般発表した「マニフェストで問うべき3つの重要課題」の内容に基づき、各党が掲げた医療政策のマニフェストについて検証する会議を開催しました。

b0144534_12102956.jpg同フォーラムは5月に発足、6月24日には「マニフェストで問うべき3つの重要課題」を発表、各政党や衆参国会議員などに提言いたしました。今回の会議は、この提言の内容に基づき、各党の医療政策に関するマニフェストの内容を検証するもので、委員13名が参加し議論を行いました。当日は約30名の報道関係者が詰め掛けるなど、会場は熱気に包まれました。

会議では冒頭から、各党マニフェストに対する厳しい意見が続出。「財源について各党とも明確に示していない」「医療がどうなるかというビジョンや詳細がないまま消費税増を求めるのはナンセンス」「無駄減らしや埋蔵金だけで医療の安定財源が確保できるのか」など、委員からは財源について発言が相次ぎました。

また、各党が医療政策決定に国民の声を反映するための会議体の設置などを打ち出したのに対し、「政策検討会議が形骸化することがないよう、メンバー構成も含め詳細に提示すべきだ」などの意見が出されましたほか、「そもそも各党がどの程度マニフェストを重視しているのか疑問」などとの声も上がりました。

全般的に期限や目標が不明確であるとの評価が多数を占めたことなどから、当フォーラムでは、1)医療政策決定プロセスの詳細、2)医療政策立案や評価に必要なデータ・統計などの整備、3)国民に求める負担や役割、の3点について来週にも各党に質問状を送付することとなりました。

※当会議の議事録は、近日中に医療政策国民フォーラムのウェブサイトで公開されます。
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by hpij | 2009-08-06 10:25 | 医療政策関連
第23回朝食会「ありがとうを集めよう。夢のある介護と医療」
日本医療政策機構は、2009 年7月1日、第23回定例朝食会を開催致しました。今回は、ワタミ株式会社代表取締役会長・CEOの渡邉美樹氏にお越しいただき、医療・介護分野に対する熱い想い、ビジョンなどについて語っていただきました。早朝から多数の皆様にご参加いただきました。誠にありがとうございました。

b0144534_11241456.jpg医療・介護分野への関心は急速に高まっており、間近に控える総選挙でも大きな争点となります。日本医療政策機構でも「マニフェストで問うべき重要論点」をとりまとめ、各政党に提言しています。医療・介護は喫緊の課題であると同時に、雇用、経済成長という点でも大きなポテンシャルを持っています。今日は、朝から夢のある明るい話をということで、渡邉会長にお越しいただきました。渡邉会長は、1959年横浜市ご出身、84年に前身となる渡美商事を設立、86年にワタミを設立し、現在は食だけでなく介護、農業や環境、個人として教育や医療などで事業を展開。国の教育再生会議の委員などでも活躍されています。

>>続きはこちら(当機構ウェブサイト)

■講師プロフィール
渡邉 美樹
b0144534_11244939.jpg1959年生まれ、神奈川県出身。明治大学商学部卒業後、会社経営に必要な財務や経理を取得するため会計システムの会社に半年間勤めた後に、1年間運送会社で働いて独立資金300万円を貯める。84年に(有)渡美商事を設立、経営不振だった「つぼ八」の店を買い取り、FC店オーナーとして起業し、飛躍的に売り上げを伸ばした。1986年に株式会社ワタミを設立、87年にワタミフードサービス(株)に社名変更(2005年4月にワタミ(株)に変更)。96年に店頭公開。2000年3月に東証1部上場を果たした。有機農業生産法人や、介護事業会社をグループ化するなど「外食」以外にも「介護」「農業」「環境」事業に拡大展開中。2003年「学校法人 郁文館夢学園」理事長、2004年「医療法人 盈進会」理事(2007年には理事長に就任)となり、学校・病院の経営に取り組んでいる。同年10月には日本経済団体連合会理事に就任し、財界活動もスタートした。2006年秋には内閣官房「教育再生会議」有識者委員のほか、「神奈川県教育委員会」委員として教育界へも積極的に活動を広げている。
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by hpij | 2009-07-21 11:37 | 医療政策関連
第22回定例朝食会「『複雑系』から読み解く医療システム」①     (中田力氏)
第22回定例朝食会では臨床医・脳科学者の中田力氏にお越しいただき、「複雑系」の観点から、医療システムを読み解く視点とアプローチについてご講演いただきました。


b0144534_10183286.jpg複雑系の国家に近づきつつある日本

まず、複雑系とは何かについてという話から始めます。簡単に言えば、現代社会においては「この世のすべてが複雑系である」と言えます。かつては、いろいろな要素が組み合わさり、どうなっていくかよくわからない系を複雑系と呼んでいました。次第に、社会構造までのすべてが複雑系と呼べるものだとわかってきた。

では、今なぜ複雑系なのか――。
 
このような場で、医学や社会学を引用してまで複雑系の話を持ち出す理由、それは日本に民主主義が根づいてきたからです。かつての、国民一人ひとりの行動を「お上」が徹底的に管理するような社会であれば、複雑系の行動学の考察など不要でした。しかし、日本でも誰かが人の行動を決定できない、一人ひとりが自由に行動しても良いという状況がつくり出されてきた。たとえば、アメリカは、一人ひとりの考え方がまったく違うため、ひとつの国家を形成するのは不可能といえるような国でした。そんな中、賢い人たちが統制をとろうと試行錯誤しているうちに、かえってガタガタになってしまった。そこで途中からは、「この際もう、あまり余計なことをするのはやめよう」と考えた。すると、不思議にもなんとなく安定感が生まれてきたのです。日本国家も、民主主義が進むにしたがって、少しずつそういう国家、つまり複雑系の国家に近づきつつあるのです。

すでに自国を複雑系として扱うアメリカ

さて、アメリカは最終的には、自国が複雑系だと理解し、国家全体の扱い方を複雑系のそれに転換していっています。政府は学者の言説に耳を傾けるようになり、複雑系の取り扱い方を取り入れた政策を採用するようになりました。日本が今抱えているいちばんの問題点は、近代社会が民主主義を中心とした複雑系に変わっていく時期に、いまだに旧体制の時代と同様に上から国民に行動を押しつけるようなやり方をしている点です。医療ひとつ見てみても、どう考えても政策立案をしている人たちがバカだとは思えない。2つ目に、どう考えてみても、医療関係者たちが日本の医療を悪くしてやろうと思っているとも思えない。さらに、日本国民が愚かな人ばかりだということはまったく考えられない。つまり、すべての人間がまともに考えて、かつまた賢い人間がベストと考えることをやっているのにうまくいかない。なぜ、うまくいかないのか。それは医療を複雑系として扱っていないからです。

では、自国を複雑系だと認めたアメリカでは、実際、国策に複雑系を取り扱う方法を、どのように取り入れているのでしょうか。例として2つ挙げてみたいと思います。

ひとつ目は、ダイバーシティプログラム。物理学者たちは、アメリカのダイバーシティ、つまり多様性を維持するには扱うものを広げなければならない――社会学的に言いますと、移民を受け入れつづけなければならないと訴えました。北朝鮮のような国家にならないためアメリカは、実は1990年代に法律で、世界各地から無差別に移民を受け入れることを法制化しました。グリーンカードを公募だけで、ただの抽選だけで各地域の人間たちに与えるようにしたんですね。2つ目が軍隊のシステムです。たとえば、ある軍がどこかを攻めようとします。ところが、攻めろと言われたときに、どうも今日攻めると勝算がない気配がしたとする。そこで攻撃を止めたら、第二次大戦中ならば、上官に対する命令違反になります。しかし、現在のアメリカ軍では、それが許されています。最終決定を一人ひとりの一兵卒が決定できるのですね。なぜか。戦争が複雑系だと理解されているからです。

繰り返しになりますが、アメリカは、この30年で政治体系をはじめとしてさまざまな社会システムに複雑系を取り入れています。国家の成り立ちがあまりに多様で不統一なため、何をどこからいじっていいかわからない、思いもしなかった問題が噴出する。それらに科学的に対処するには、複雑系への対処方法を用いることが必要だと悟ったのです。

b0144534_10203047.jpg医師数増加で問題は解決しない

実は、医師の仕事は、患者さんを扱っている限り、実質的に複雑系で、医師はそれを理解しています。なぜなら、医学において「こうだからこうだ」と、断定的に言い切れることはひとつもないと知っているからです。人の健康には膨大な数の因子があります。医師は、基本的に自分たちはいつも複雑系を扱ってきたんだと理解するでしょう。

全体を見るのか、はたまた、それぞれ一つひとつの小さい部分を見ていくのかで、何をしたらいいのかが変わるのが、複雑系の特徴です。ところが、一つのシステム、全体を左右しているパラメータがあまりにも多すぎ、いろいろな要素が絡まっている場合には、どうしても見た目でAということが起こっていると、Aに対処しようとしてZを動かしてしまい変なことが起こってしまう。複雑系の特徴を理解していないと、こうしたことがよく起きます。

今、医療界が危機的状況にあるのは、医師の数が足らないからだと皆さんはおっしゃる。医師を増やせば、なんとかなるという発想が大勢を占めています。僕から言わせれば、何を言ってるんだかよくわからない。正しくは、医師の数が足らないのではなくて、「患者さんを診るちゃんとした医師が足りない」のだ。つまり、医療界を救うには「患者さんを診る医師」、「きちんと診察できる医師」を増やさなければならない。にもかかわらず、「医師が足らない」として、単純に数をオーダーパラメータにしようとしている。しかし、それに触ってしまった瞬間に、全体が、いい方向か、悪い方向かわかりませんが、ある方向に大きく変わってしまうのですよ。複雑系の難しいところを理解していないと恐ろしいことになります。

まずはオーダーパラメータを見つける

有名な雑誌『サイエンス』ではときどき、これからどういう時代に入って行くのかを示唆するときがあります。80年代に出た『サイエンス』には、「1+1=0です」とありました。つまり、これからはコンピュータの時代になると言いたかったのですね。そして、90年代になると「2+2=5です」と掲載されました。これからは複雑系の時代、非線形の時代に突入すると伝えようとしたのです。日本の社会では、なにがなんでも「1+1=2」にしようとしますが、もう、そういう時代ではない。やってみないと、どうなるかわからない時代になったのです。

政治的に自分たちが何かをするときに触るべきは、オーダーパラメータだけです。オーダーパラメータだけを触ってみて、全体像がどうなっていくか――つまり非線形を我々は眺めなければいけない。それが、実は非線形の扱い方です。医療は基本的には非線形で動くのであり、日本全体が複雑系の社会になったときには、やはりそれに呼応した対応をしない限り、自分たちが望む方向には決して社会は動きません。だからこそ、早急に、医療を対象にどういうオーダーパラメータがあるのかを見つけていかねばなりません。

医療で大切なパラメータはお金と医師

医療のひとつ目のオーダーパラメータはお金です。お金をいかに扱うかで、社会システムは常に変化します。経済に関してならオーダーパラメータをお金のみとし、その流通をコントロールすればいいのですが、医療はそれだけではうまく機能しません。医療に欠かせないオーダーパラメータがもうひとつある。それが、医師。つまり、お金と医師の2つのオーダーパラメータをいかに扱うかが、鍵なのです。相手が複雑系であればあるほど、細かな自分たちの目の前に見えてくるパラメータをいじってはいけません。簡単に言えば、医療でいう対症療法をしてはいけないのです。 目を転じて、今の日本政府は医療危機に対して対症療法だけをやっている。言ってしまえば、「この国の医療はもうだめだ」を前提にして医療行政を行っているとしか思えません。
 
同様に、現在、自分たちの目の前の医療危機が、いったいなぜ起きているかを考えてみると、何万というパラメータがありますが、非常に大きな要素になっているのが、お金と医師の2つ。したがって、その2つをもってすれば医療危機を脱せるでしょう。

b0144534_10225937.jpg正しい方法論を用いれば医療は救える

日本は、G7諸国の中でもっとも医療にお金を使っていない国です。お金を使わなければ医療制度はだめになるとわかっているはずなのに、アメリカにくらべておそらく6分の1くらいしかお金を使っていません。イギリスは、日本に先んじて医療費を削減しましたが、過ちに気づき、ブレア政権が医療費を倍増しました。現在、医療費は日本の2倍に達していますが、ときすでに遅く、医療制度は完全に崩壊してしまいました。幸いにして日本の医療制度は、まだ崩壊はしていません。医療におけるお金というパラメータは、とても重要です。あまりに医療費が少なすぎるのが問題なのですが、国民のコンセンサスなので仕方がありません。

もうひとつ、日本にとってきわめて大事なのは、先ほども申し上げましたが医師のコントロール。コントロールの解釈を誤解する人もいますが、僕の言う医師のコントロールとは、一人ひとりの医師が心配なく働ける状態を指します。医療にきちんと社会が目を向け、医師自身のとるべき行動にきちんとした規範がある。悪いことをした医師は、医師仲間が告発しなくともきちんと摘発される仕組みになっている。そのような状況にしない限り、日本の医療はボロボロになるだろうと思います。日本人は、本当にいい人ばかりなのですから、正しい方法論を用いれば日本の医療は救えると思います。

複雑系に関してはもう少し細かい話をしていけば、医療に関してもどんどんいろいろな要素、どういう組み合わせでパラメータを触ればいいのかといった話もできると思います。ただ、あまり難しいことを、かつまた細かく言ってしまうのは、かえって混乱を招く結果にもなる。そこで本日は、「複雑系」そして「オーダーパラメータ」という言葉を皆さんの頭に残すことを主な目的に話をつづけさせていただきます。

対象とするものの全体像を知れ

全体像を見る力は、人間に与えられた力のうちでもきわめて重要なもののひとつです。何かに取り組む際、いったい自分たちはどこに向かっているかの把握が大切です。すでに世の中は、どれだけ賢い人間がどういうことをやろうが、思い通りに動かせはしない。まず、それだけは、ご理解いただきたいと思います。

大切なのは、どういうものを扱うかをまず決めること。アメリカ時代のボスの表現を借りると、“Identify your problem”。彼はどういう会話においても、絶対になんのためにその会話をするかを言わない限り、何も話しません。批判も言わないし、どうしろとも絶対に言わない。常に会話を開始するための最初の条件は、“Identify your problem”。要するに何かを相談したいんだったら、何が問題の対象なのか、とにかくIdentifyする。それについて語れと言われました。

「蝶々効果」こそ、民主主義の基本

扱うべき対象を自分たちで決めたのち、その中で必ずオーダーパラメータを見つける。逆に言えば、現在では、すべきことを決定する行為は、能力の高さにはつながりません。自分たちが何を対象にするか、昔で言うフィロソフィーが何かを確定し、全体像の中でここを対象にすると決定し、その中で何が重要なパラメータであるかを見つけていくことが、ある程度以上に能力があり、なんらかの仕事をしなければいけない人たちがやるべきこと。それを、僕らはシステム・オーダーパラメータと表現しています。

複雑系を初めて具体的に語ったのが、理論気象学者のローレンツです。彼は、天気予報の基礎研究に取り組み、その成果を説明するためにどうするかを考えました。そして講演のタイトルを『アマゾンで蝶が1回羽ばたきしたら、その結果テキサスで竜巻が起こるか』とし、結論は、起こるとした。それが物理学上有名な理論、初期状態依存性に関する蝶々効果(バタフライ・エフェクト)です。複雑系においては、1ヵ所で起こったちょっとしたことが、やがて大きな波となり、ある場所でとんでもない現象を引き起こす。この「蝶々効果」こそ、民主主義の基本です。人ひとりが何かやっても、結局は力ある者に負ける――。それは、違います。民主主義が進めば蝶々効果が起きます。ひとりの行動が、必ず大きなうねりを巻き起こす。それが、複雑系の特徴なのです。ここにいる皆さんが、何をオーダーパラメータにするかに同意し、きちんとした議論を交換できる状況をつくれれば、この国はあっという間に良くなります。

複雑系とは、一見難解な理論のようですが、実は私たちにいろいろなことを教えてくれます。「全体像を見る力が大事なんだ」と言ってくれます。方向性を決める、逆に「フィロソフィーをきちん据えなければ、がんばってもどこにたどり着くかわからないよ」と教えてくれる。「民主主義を貫く限り、ほんの小さなことでもいつかそれが大きな力になる」と教えてくれます。
 
日本の現状を見ると、「手続き」ばかりをやっている。次の書類は何をつくるのか――。その書類がつくれる人が、「この人は勉強ができる」と評価されます。意味がないですね。日本を変えるには、そこを変えねばならない。書類の書き方ではなく、書類の内容が重視されればいいのですよ。最終的に自分がどこに到達したいのかを考えながら、きちんとしたオーダーパラメータを扱うようにすることが重要です。医療に関して言えば、医師というオーダーパラメータを触っていない点が致命的です。医師というオーダーパラメータを触るとは、たとえば専門医制度の整備であると、ここ25年間私は言いつづけてきました。そろそろやらないと、この国も終わりだと皆さん実感し始めたころだと思いますので、この点を最後にお伝えして私の話を終わりにします。どうもご清聴ありがとうございました。

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by hpij | 2009-07-08 20:31 | 医療政策関連
第22回定例朝食会「『複雑系』から読み解く医療システム」②     (中田力氏)
第22回定例朝食会「『複雑系』から読み解く医療システム」①>>>
(続き)
――質疑応答――

会場――医師というオーダーパラメータをいじるとは、専門医制度の整備だという点について、もう少しお話しいただけますでしょうか。

中田 話題がどんどん細かくなって、それが「どうしてか」だけの話をすると、今度は逆に手続き主義の話になってしまうんですよ。すみません、わかりづらいのですが、オーダーパラメータは専門医制度の整備とイコールではありません。オーダーパラメータは、あくまで医師です。医師をひとつのシステムとして見ます。そしてお金をはずして、医療制度をはずして、医師のシステムの中で、現時点でもっとも注目されるのが専門医制度というだけです。オーダーパラメータは専門医制度ではなく、医師です。そこを誤解のないようにお願いします。日本にも一応専門医制度がありますが、それは手続き主義上つくられたものです。アメリカの専門医制度は、医師が、患者さんがいつでも安心して話のできる存在であることの証を公布している。それのみを目標に制度設計されています。1910年にフレクスナーが確立した理念を守り、それに絶対反しない精神によって貫かれています。

会場――2つ質問させてください。ひとつは、日本の医療制度はアメリカの制度よりかなり貧弱であるとおっしゃいました。それを証明するようなものがあるのかが、ひとつ。また、それを是正するものがオーダーパラメータのひとつである医師の専門医制度であるとする根拠はなんでしょうか。もうひとつは、アメリカのマイケル・ムーアがアメリカの医療の混乱を描いた映画『シッコ』をつくりました。アメリカ医療の専門医制度はすぐれていても、映画のような状態にあるとしたら、本当の意味でアメリカの専門医制度がすぐれていると言えるのでしょうか。

中田 2番目の質問からお答えします。『シッコ』をご覧になった方の中には内容について、たいへん誤解なさっている方が多いように感じます。僕が日本の医療で問題視しているのは、「医療制度」そのものではありません。「医療」そのものが危険なんだと言っているんです。イギリスでも問題になったのは同じでした。すべてのアメリカ国民がどこの国の医療を受けたいかと問われれば、自分の国の医療を選ぶはずです。アメリカのどんなにお金のない人でも、アメリカ医療に対してその能力を疑ってはおりません。『シッコ』で表されたのは貧富の差。つまり、かつては高いレベルの医療をすべての人間が普通に受けられるだけ、アメリカは金持ちだった。それがどんどんお金がなくなって貧富の差が生じ、とにかくアメリカの医療をボロボロにしたんですね。 『シッコ』で表されているのは、医療制度に対する批判ではありません。「医療を受けるのに、どうしてそれほど金がかかるんだ」ということを訴えたかったのです。いずれにしろアメリカの医療が崩壊していない最大の理由は、「医療」そのものへの信頼性がなくなっていないから、医療の、医師一人ひとりのレベルが保障されているからです。
 
続いて最初の質問に答えましょう。典型的なんですが、日本の皆さんはなぜか証明という言葉を好んで使います。証明は、そのバックグラウンドにあるものが正しいことを前提にします。正しいことを前提に何かしなければならないのだとすると、この国は崩壊するしかありません。そして、何が正しいかは社会が決める。私の言いたいことが、わかりますか?言いたいことを理解してもらうために30何年前から、よく私は神を例に出して話をします。本当に神を信じている人たちが、それぞれの神の話を始めてしまったら、もう終わってしまうんですね。それぞれが信じている神が違うのに、「自分の神がいちばん正しい」と言いだしちゃったら、もう殺し合うしかないわけです。

アメリカ国家の中で何が正しいかという問いかけは、僕らは絶対にしません。民主主義ですから、みんなで「どうしようか」と決めるべきだからです。そして、アメリカ国家は何をしているかというと、みんなで決めたことに違反しているかどうかを徹底的に監視しています。何が正しいかがはっきりとわかっていたニュートンの時代までが、現代科学の花の時代でした。21世紀の科学は、何が正しいかどうかがわからない。理論が正しいかはわかっていても、やってみるまで結果がわからないのですね。ですから、21世紀の科学はほとんどがシミュレーション科学と言えます。

では、医療のオーダーパラメータにお金と医師を選びましたが、それだけでけりがつくのか。先ほど申しましたように、基本的に最初に対象とすべきシステムが問題。僕が、今対象にしているのは全体像、本当の全体像です。それに対して、なんらかのサポートがあるのか。アメリカはあれだけ無茶苦茶な国家で、あれだけ無茶苦茶にやってきたのに、医療は良くなっている。それは、1910年にフレクスナーがやったサポートの仕組みに由来します。彼は、1ヵ所1ヵ所、アメリカにある医療機関のすべてを見て歩きました。彼は、見た瞬間に医学部とそのブレインをABCランクに分けて、Cランクの医療機関はその場で閉じさせました。Bランクのところは1年間の猶予を与えてAをめざさせた。フレクスナーレポートを読んでくれるとうれしいのですが、1910年という僕が生まれるより40年も前にそんなことをしていたのですね。たとえば、有名なカリフォルニア大学に夜中に突然行くと、若いやつがひとりで当直をやっていた。その人に聞きます。「お前、何年目なの?」。「卒業して2年目です」。「ひとりでやっていて怖くない?」。「怖いです」。判定はC。わかります?たとえば、日本でAという先生が国家から決められて「日本の病院をみんな見てこい」と言われた。その先生が、東京大学医学部の病院に行って当直をやっていたやつに怖いか聞いたら「怖い」と言った。その一言で、東京大学医学部を廃止したのです。それをやったおかげで、現在のアメリカ医療ができあがった。そこまで厳しい評価にさらされてきたからこそ、アメリカ医療のレベルは高い。つまり、無茶苦茶な中でも生半可な基準をつくらなかったから、現状が生まれた。

ひとつの証明にはならないかもしれませんが、その結果としてどんな現象が起こったか。世界医療がアメリカの医療制度を受け入れました。現在、ヨーロッパからアジアまで、すべてがアメリカのレジデント制度を導入しています。1ヵ国だけ先進国でやっていない国が日本ですね。ですからグローバル医療に負けたんですよ。韓国は、最近まで日本と似た制度でしたが、アメリカ医療に転換することを決めました。ですから現在、大学医学部とメディカルスクールとが半々に存在しています。いちばんレジストしたのは、ヨーロッパ。しかし、ヨーロッパはレジストしたけれども、約15年前にすべてアメリカのやり方を踏襲しました。証明にはなりませんけれども、世界の動きを見てみれば、アメリカの医療のトレーニング制度、専門医制度がいいということは、実は日本以外の先進国すべてが認めているところです。そんな回答でよろしいでしょうか。

会場――「蝶々効果」により最終的にトルネードが起きるとのお話でした。それは、アメリカの文化を前提にすれば腑に落ちるのですが、日本のように制度に足を引っ張られる国では、事象の起こるスピードがまったく違うのではないでしょうか。いつかは起こるかもしれませんが、もしかしたら起こるか否か自体に疑問が残るかもしれない。そう感じました。

中田 すばらしいご質問です。本来なら、アメリカのようにまず現場の試行錯誤があり、そこからの積み上げの結果、国家としてどうするかの議論が生まれ、制度が生まれるのが民主主義の理想です。トルネード効果の発想は、そこが基本になっています。おっしゃるとおり、今の日本にはそのようなプロセスで制度をつくるほどの余裕がありません。そこで、私からのお願いがあるのです。わかっている人間にやらせてくれと。少々トップダウンになりますが、今、私たちはたとえば、内閣府に委員会を設立して最初の全体像を策定させてくれと申し出ています。その理由は、日本の国民は心がきれいだから、トップダウンが通用すると思うからです。アメリカでは、絶対に不可能なことです。さらには、日本の医療界には優秀な人材がそろっているため、「話せばわかる」と思えるからです。アメリカではこの方法論は通用しません。それほどに、多様な価値観を持った人が集まっているのです。「金ならわかる」のですが(笑)。目標のひとつは、専門医制度の整備です。それは、医師がすべきことで、医師以外の専門家に委ねてはならないことです。素人に決定させては、医療は崩壊します。医師が、自分で自分を律しない限りどうしようもないのです。


b0144534_10234320.jpg日本医療政策機構代表理事
黒川 清


太平洋戦争で軍部が犯した過ちのひとつとして、「勝つ」という目的のためにどうするかという論理が皆無であった点が挙げられます。彼らはまるで、「勝つ」=「敵の全滅」と考えていたとしか思えない行動をとりました。細かい戦局の勝敗に一喜一憂したことなどが、その最たる例です。そのような思考は、鎖国の歴史が培ったのかもしれません。そして、今の日本人にも受け継がれています。医療政策にまつわることに、相変わらず「大本営発表」の臭いが漂うのはそのせいでしょう。国民一人ひとりが考え、選んだ結果、政策が決まる社会をいかに築くかがとても重要なのだと思います。私が、中学生や高校生を前に講演するのは、まさにそのためです。

問題はいろいろありますが、たとえば日本のオピニオンリーダーたちの資格について疑問を感じます。典型的なケースが、「アメリカでは」、「イギリスでは」というタイプの論陣を張る人物の経歴を追ってみると、アメリカでの実体験が、大学から派遣されて2年程度のものだったりします。その程度のアメリカ体験で、「アメリカでは」との主張を――、あまつさえ医療制度の例としてアメリカの制度を引用するのは、あまりに不誠実でしょう。そんな人物に限って、大学で教授職を得ていたりもする。わかりもしない人がわかった風に世論を引っ張っている。これは、大本営の犯した罪とまったく変わりのない図式です。

もちろん、海外での体験を持つ人材は貴重ですが、真の生活体験を持つ人材を多く生み出すことが大切です。私は、日本の大学に学部の学生の一定割合を必ず留学させることや、学部の授業の一定割合を英語で行うことを盛り込んだ私案を政府に提案しています。若いうちに海外に出し、海外の人材とコミュニケーションさせ、それぞれの分野で同じ世代間でネットワークを築く。そこからしか日本社会の変革は起きないでしょう。そういう意味で、真の意味で海外生活を体験された中田先生の本日のお話は、たいへん刺激的であり、グローバル時代における日本医療の改革の方向性を明確に示していただけたと思います。
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by hpij | 2009-07-08 20:25 | 医療政策関連
「医療政策国民フォーラム」第1回検討会開催!
日本医療政策機構は、医療政策の検討や提言を行う民間会議「医療政策国民フォーラム」を立ち上げ、2009年5月20日に東京都内で第1回目の検討会を開催、運営方針などを話し合いました。

当日は、約20名の委員に加え報道関係者や見学者などで満席となり、会場は熱気に包まれました。会議は約2時間にわたって行われ、委員の自己紹介のほか、フォーラムの主旨や今後の運営方針などについて話し合われました。当面の目標として、2009年に実施される衆議院議員総選挙において各政党が国民に問うべき医療政策の重要論点や政策の選択肢などを提示することを確認、6月中には提言をとりまとめる予定です。また、7月以降は一般公開のシンポジウムやタウンミーティングなども開催する方向で検討しております。

当日の議事録はこちら

なお、全体検討会はどなたでも傍聴することができます。今後の予定などについては、「医療政策国民フォーラム」ウェブサイトをご覧ください。

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by hpij | 2009-05-27 10:53 | 医療政策関連
第2回 パーソナルヘルス・シンポジウム「ウェルネスと予防のイノベーションに向けて」(1日目)
■印刷用PDFはこちら(日本医療政策機構)

筑波大学と日本医療政策機構は2007年から2回にわたり「パーソナルヘルス」「健康投資社会の実現」などをテーマにシンポジウムを開催してきた。2009年は国際NPOであるコンティニュア・ヘルス・アライアンスとも共同で、「ウェルネスと予防のイノベーションに向けて」をテーマに掲げて開催、国内外からも多数の方々が参加した。シンポジウムは、2月3日、4日の2日間にわたって国連大学(東京・青山)行われ、最後まで活発な講演とディスカッションが展開された。

1日目
■開会の辞
b0144534_1743416.jpgチャールズ・パーカー(コンティニュア・ヘルス・アライアンス エグゼクティブ・ディレクター)
私どものアライアンスは、各個人の健康管理をどう促していくのか。ぜひ、適切なサポートを提供していきたいと思っている。




b0144534_1744250.jpg田中敏
(筑波大学 理事・副学長)
日本では少子高齢化社会となり、ウェルネスイノベーションの重要性は、今や明らか。生活と健康、地域社会と健康など、さまざまな側面から個人の健康を考える時がきたと感じる。



■基調講演:
我が国における医療の課題と医療政策の展望

b0144534_1744864.jpg渡辺孝男
(厚生労働副大臣)
「個人の健康情報を活用した健康サービスの提供に取り組む」
厚生労働省では、医療関係機関の情報化、遠隔医療、レセプトオンライン化、個人の健康情報の活用、社会保障番号・カードの導入などに取り組んでいる。実現すれば、患者や医療機関等に役立つコミュニケーション、医療保険事務コスト削減、国民自らの健康管理が可能になると期待する。


■基調講演:
最新テクノロジーとサービスサイエンスの融合に基づくウェルネスイノベーション

b0144534_1745465.jpg久野譜也
(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 准教授)
「ニーズに合った最新テクノロジーの開発が重要課題」
予防医療の成果を出す条件は、①科学的根拠、②評価にもとづく個別プログラム、③継続支援のコンテンツとコミュニティー化、④専門職の高度化と見合った賃金、⑤サービス提供側(自治体など)の低負担。条件をそろえるには、サービスサイエンスに基づくネットワーク化、情報データ共有化が必須だ。


■パネル討論:
パーソナル・テレヘルスが切り開く新しい世界

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司会
板生清
(東京理科大学 総合科学技術経営研究科 教授、東京大学名誉教授)

パネリスト (*発言順)
・ジョージ・マクギニス
Assistive Technology Programme Lead NHS Connecting for Health)
サービスプロバイダーの取り組み
「予防医療に必要なのは、大衆向けの低コストですむ活用範囲の広いサービス」

・ジュリアン・ゴールドマン
(Director of the Program on Interoperability at CIMIT Partners Healthcare)
「電子的デバイスを使いConnected Health Programにより治療を支援」

・江頭昌剛
(株式会社エー・アンド・デイ 取締役常務執行役員 営業本部副本部長)
「家庭と病院をつなぐ鍵は、生体信号のモニタリングと健康データの蓄積」

・本田郁雄
(パナソニック四国エレクトロニクス株式会社 ヘルスケアマーケティング本部 本部長)
「計測、相談から検査、診断、治療、各段階で必要な医療機器を提供」

・宗像義恵
(インテル株式会社 アシスタント・ゼネラルマネージャー)
「ITテクノロジーで人々と情報をつなぐことにより効果的なヘルスケア環境を創出」

【概要】
イギリスやアメリカでは、すでに監視や警告、モニタリングなどのデバイスが幅広く活用され、高い効果をあげている。今後の主要課題として、各種デバイスと医療機器・システムとの相互運用が挙げられた。一方、日本でのテレ・ヘルスは、まだ緒についたばかり。しかし、各企業が暗中模索しながらも、意欲的に技術開発に臨む姿勢が感じられた。


■基調講演:
地域づくりと環境・健康施策における地方自治体の挑戦

b0144534_17142376.jpg中貝宗治
(兵庫県 豊岡市長)
「目標は、『コウノトリが、また野生で暮らせる豊かな環境をつくろう』」
豊岡市が取り組んでいる健康施策には、主に3つある。まず健康づくりの拠点となる「総合健康ゾーン」づくり。次に運動習慣を幼児期からつける「運動遊び」の展開。50ある幼稚園・保育園すべてで実施中だ。最後は食の健康をテーマにした農作物からの農薬の排除だ。


■パネル討論:
地域健康づくりが可能とする持続的な健康・医療システム

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司会
久野譜也

パネリスト (*発言順)
・久住時男
(新潟県 見附市長)
「高齢者がいろいろな活動に参加できる仕組みづくりに焦点を当てる」

・中貝宗治
(兵庫県 豊岡市長)
「狭義の健康と広義の健康の両方をにらんだ施策が自治体には大切」

・天野恵子
(千葉県衛生研究所 所長)
「健康コーディネーター事業で、身体的な自己管理の視点をアピール」

【概要】
自治体の中には地域住民の健康を守るために具体策を講じて地道な実績を積み上げつつあるところがある。しかし、各パネリストから共通して口にされた大きな課題は、住民の健康への関心の低さ、いくら施策をつくっても住民の行動につながらないという点だった。状況打破には、住民へのエビデンスのアピール、健康は自己責任だとの認識づくり、さらに自治体トップの地域医療に対するより深い理解と勉強が必要だとの意見が出た。

→続きを読む(会議2日目)
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by hpij | 2009-04-28 18:34 | 医療政策関連
第2回 パーソナルヘルス・シンポジウム「ウェルネスと予防のイノベーションに向けて」(2日目)
2日目

■印刷用PDFはこちら(日本医療政策機構)

■開会の辞

b0144534_15145544.jpg石川真澄
(コンティニュア・ヘルス・アライアンス日本地域委員会 代表)
自治体、企業など、さまざまな分野から参加していただきうれしい限りである。幅広い議論を進め、日本でのパーソナルヘルス推進の一助になれば幸いだ。



■パネル討論:
「医療再生」に向けた遠隔医療の可能性

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司会
金子郁容
(慶應義塾大学 政策・メディア研究科委員長/教授)

パネリスト (*発言順)
・梶井英治
(自治医科大学、地域医療学センター センター長)
「これからの地域医療には、各都道府県をあげた支援体制が不可欠」

・村瀬澄夫
(東員病院 院長/三重大学客員教授)
「遠隔医療で、医師という医療資源の有効活用と医師の疲弊緩和を」

・内田健夫
(日本医師会 常任理事)
「へき地・離島の医療対策、医師不足の補完、地域医療格差の是正に有効」

・奈良俊哉
(総務省 情報流通行政局地域通信振興課 課長)
「ICTを活用していかに医療連携を効果的にできるかの実証を手がける」

・増永明
(経済産業省商務情報政策局サービス産業課医療・福祉機器産業室 室長)
「民にも呼びかけ、遠隔医療を支える健康サービス産業を育成する」

【概要】
IT機器の活用範囲が、まだまだ広がると思われる医療界。特に遠隔医療は、医師の偏在、医師不足などの喫緊の問題解決にもつながるとの指摘がめだった。総務省・厚労省・経済産業省の三省合同で、遠隔医療懇談会もできたという。医療現場からも「医療連携の大きなツール」、「医療施設・サービス提供者間の情報共有に有効」などの発言があり、高い期待がうかがえた。


■パネル討論:
「少子高齢化・人口減社会」を克服するためのパーソナルヘルスの将来像

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司会
山田信博
(筑波大学 理事/附属病院長)

パネリスト (*発言順)
・國定勇人
(新潟県三条市長)
「健康運動教室の開催など運動推進で、医療費の抑制効果を生み出す」

・小澤正彦
(株式会社損保ジャパン・ヘルスケアサービス 代表取締役社長)
「社会保障について、国民に理解を促す教育と国民が参加できる体制を」

・一條宏
(株式会社バイタルネット 執行役員)
「薬局にウェルネスのステーション機能を持たせる事業化に挑戦」

・大下博司
(オムロンヘルスケア株式会社 取締役兼執行役員副社長)
「測定をすることは、運動行為の継続への動機づけになる」

・古川俊治
(自由民主党 参議院議員/慶應義塾大学法科大学院法務研究科・医学部外科教授/弁護士)
「パーソナルヘルスを推進していくためには、エビデンスの積み重ねが必要」

・足立信也
(民主党 参議院議員/医師)
「高齢化社会で有効な保健師が活躍できるためにも医療保険を地域単位で再編すべき」

【概要】
パーソナルヘルスの推進は、国だけでは難しく、地方自治体が加わり、さらには民間企業が参加し、ともに協力し合って、国民と向き合ってこそできるものであると実感するパネル討論だった。特定保健指導事業を継続してエビデンスをつくり、国民と情報を共有化して、国民の健康管理、特に生活習慣病対策への動機づけを形成していかねばならないというのが、パネリストの共通認識であった。


■コンティニュア対応機器・サービスのプロトタイプによるデモンストレーション
デモにより、測定からデータ管理までノーストレスでできることがわかった。コンティニュア対応機器は、どの会社の製品、ソフトも自由に組み合わせて使えるので、自身での健康管理がより身近に行えるだろう。


■基調講演:
健康・医療に関する産業界の期待

b0144534_15261794.jpg北城恪太郎
(日本アイ・ビー・エム株式会社 最高顧問)
「医療に関する、新しいサービス/産業の創造による日本経済の発展と世界への貢献」

少子・高齢化が進む日本は、世界に先駆けて、高齢化社会に必要なサービスや産業を創り出すようなイノベーションが求められる。そのためには、既存の企業の創意工夫とともに、ベンチャー企業を支援・育成し、活用していくことも必要だ。また、イノベーションを担う人材の健康を確保するためにも、治療から予防にシフトして、社員が意欲とやりがいを持って仕事に取り組めるようにすることが重要だ。


■基調講演:
先進予防型健康社会の方向性

b0144534_15264071.jpg近藤正晃ジェームス
(日本医療政策機構 副代表理事)
「今後、必要になる予防への取り組みの主な4つの領域」
先進予防型健康社会として、今後、①費用対効果が高い予防法の速やかな導入、②QOL向上のための施策(たばこ対策、食生活の改善、運動不足の解消など)、③インフルエンザ、医師不足、小児救急など社会緊急課題への対処、④医療関連の産業・雇用創出の4つに着手すべきと考える。


■パネル討論:
先進予防型健康社会における企業の役割

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司会
近藤正晃ジェームス

パネリスト
・松尾嘉朗
(大塚ホールディング株式会社 常務取締役・健康保険組合理事長)
「社員に健康プログラムを導入し、健康に対する医師改革を図る」

・片切寛
(アクセンチュア健康保険組合 顧問/株式会社バリューHR取締役 経営管理部長) 
「健診の結果等を管理するシステムをインターネットで社員に提供」

・川口毅
(全日本労働福祉協会 常務理事/人間総合科学大学 大学院教授)
「健保連には、医療費の情報を活かし治療の評価システムを考えてほしい」

【概要】 
企業がどこまで社員の健康に踏み込むかは、常に議論になるところだ。しかし、従業員の健康管理は事業主の責任であるとの前提を崩してはならないこと、また健保連もそれを認識して厳しい状況に対している様子が、パネリストの発言から感じられた。やはり、ポイントになるのは従業員の自身の健康に対する意識の低さで、ヘルスプロモーションの必要性についての提言もあった。


■閉会の辞
久野譜也
最近科学的に生涯発達し続けられることが証明された。この生涯発達を可能とするためには本人の意欲に加えて、それを可能とする環境整備がポイントである。まさしくウェルネスイノベーションの役割がここにある。


■総括
ウェルネスと予防について日本の取り組みは、まだまだこれから。これから国、地方自治体、民間企業の努力が期待されるところだ。しかし、2日間のシンポジウムで明らかになった最大の壁。それは、国民の健康に対する意識の低さ、自己の健康管理への無関心だ。国民の参加がなければ、ウェルネスと予防の効果は見えない。そうなれば、国民の健康状態は悪くなり、医療費削減効果にもつながらず、産業の活性化も起きない。まずは、国民の意識改革を図り、活動を継続させる必要がある。その動機づけと継続には、IT技術が大きく貢献するであろう。


■開催日:2009/2/3, 4
■場所:国連大学 ウ・タント国際会議場(東京都港区)
■主催:コンティニュア・ヘルス・アライアンス・筑波大学・日本医療政策機構
■協力:インテル株式会社、大塚製薬株式会社、オムロンヘルスケア株式会社、株式会社損保ジャパン、株式会社つくばウエルネスリサーチ、(50音順)
■後援:総務省
(登壇者名・写真:発表順、敬称略 写真撮影:工藤哲)
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by hpij | 2009-04-28 18:00 | 医療政策関連
第6回医療政策クラークシップ「たばこ対策を考える」
「医療政策クラークシップ」(主催:日本医療政策機構、協力:東京大学医療政策人材養成講座)は、全国の医学生を対象とした医療政策立案プログラムです。第6回を迎える本年は、3月16日~3月27日までの2週間にわたり東京大学医学部を主な会場に開催されました。 全国から公募で選ばれた医学生19名を対象に 「たばこ対策」をテーマに実施されました。

プログラムの中で学生は、医療政策概論、医療政策と政治、問題解決手法やインタビュースキルなどに関する講義で基礎知識を習得。その上で、厚生労働省、財務省、経済産業省などの省庁担当者から、医師や研究者などの専門家、たばこ対策を行う団体やNPO、さらには公共交通機関、ホテル、製薬、たばこメーカーに至るまで、あらゆる関係者に対するインタビューを行い5チームに分かれて政策提言をまとめました。

3月27日(金)午前に審査を行い最優秀賞を決定、今回受賞した2チームは、3月27日(金)15時、禁煙推進議員連盟事務局長の石井みどり参議院議員を訪れ、政策提言を手渡しました。
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■最優秀政策提言
・「若年者に対する参加型たばこ教育実施案~孫が出来る頃、禁煙国家に変わる~」
・「声を集める。社会を変える。~スモーク・フリーな社会を目指して」


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(写真/上左より)
①石井みどり参議院議員に最優秀政策提言を手渡す学生チーム
②「たばこ対策の概論」オリエンテーション
③チーム毎のミーティング
④小宮山洋子衆議院議員による講演
⑤ファイザー株式会社でのレクチャー
⑥「プレゼンテーションスキル、インタビュースキル」レクチャー
⑦国会議事堂前で集合写真
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第6回医療政策クラークシップ

■主催:
特定非営利活動法人 日本医療政策機構/協力:東京大学医療政策人材養成講座

■期間:
2009年3月16日(月)~3月27日(金)の2週間

■目的:
医学と政策の双方に通じ、医療政策の改善と改革に貢献できる人材を養成するため、2004年から開催。これまで「がん難民」などさまざまなテーマに学生自ら政策提言を取りまとめてきた。第6回目を迎える2009年は、たばこ値上げ議論や受動喫煙防止条例の取り組みなど世論の高まりを受け「たばこ対策」をテーマに取り組んだ。

■場所:
東京大学医学部キャンパスほか

■参加者:
全国から公募により選ばれた、全国10大学の医学部生約20名(東京大学、慶應義塾大学、北海道大学など)

■ご協力:
朝日新聞東京本社、NPO神奈川会議、禁煙推進議連(小宮山洋子衆院議員、石井みどり参院議員)、経済産業省、厚生労働省、国立がんセンター、財務省、スターバックスコーヒー株式会社、禁煙スタイル、日本経済新聞社、日本医師会、万有製薬株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、ファイザー株式会社、フィリップモリス ジャパン株式会社、McKinsey & Company, Inc. Japan、山梨まんまくらぶ、株式会社ロイヤルパークホテル
ほか(五十音順)

ご協力頂きました皆様に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
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by hpij | 2009-03-31 18:20 | 医療政策関連
第21回朝食会「医療政策は選挙で変える」権丈善一先生
去る2009年3月19日に開催し、第21回を迎えた定例朝食会。

今回は、医療政策分野で最も注目されている研究者のひとりである権丈善一先生にお越し頂き、「医療政策は選挙で変える」と題してご講演頂きました。医療従事者はもちろんのこと、メディア、政府、企業などから多数の方にご参加頂きました。同名の著書は、2007年参院選直前に出版され大きな話題を呼びました。近く予想される総選挙を前に、医療政策をより良くするために何をすべきか、国民は何を知るべきか、活発な議論が展開されました。

多くの方にご参加頂き誠にありがとうございました。

■当日の配布資料はこちら(日本医療政策機構ウェブサイト)
■権丈善一先生の近著
『医療年金問題の考え方』 慶應義塾大学出版会、2006年。
『医療政策は選挙で変える(増補版)』 慶應義塾大学出版会、2007年初版。
『社会保障の政策転換』 慶應義塾大学出版会、2009年。

■講師略歴
権丈善一(けんじょう よしかず)
慶應義塾大学商学部教授 博士(商学)
b0144534_11245545.jpg1962年福岡県生まれ。1985年慶應義塾大学商学部卒業、1990年慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了。嘉悦女子短期大学専任講師、慶應義塾大学商学部助手、同助教授を経て、2002年より現職。
主要業績に、『医療経済学の基礎理論と論点(講座 医療経済・政策学 第1巻)』(共著、勁草書房、2006年)、『医療年金問題の考え方―再分配政策の政治経済学Ⅲ』(慶應義塾大学出版会、2006年)、『再分配政策の政治経済学I―日本の社会保障と医療[第2版]』(慶應義塾大学出版会、2005年〔初版、2001年、義塾賞〕)『年金改革と積極的社会保障政策―再分配政策の政治経済学Ⅱ』(慶應義塾大学出版会、2004年、労働関係図書優秀賞)、翻訳としてV. R. フュックス『保健医療政策の将来』(共訳、勁草書房、1995年)などがある。

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by hpij | 2009-03-31 11:40 | 医療政策関連
日本の医療に関する2009年世論調査
増大する医療ニーズ、ライフスタイルや疾病構造の変化、医療財源の確保、政策決定プロセスにおける市民・患者の果たす役割の増大など、わが国の医療はいま大きな転換期を迎えています。このような中、日本医療政策機構では、国民が求める医療制度や、その根幹となる設計理念を明らかにすべく、2006年から全国の有権者を対象とする世論調査を実施して参りました。
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特に今年は、政権選択選挙となる総選挙の年であることや、最近の雇用・経済情勢が急速に悪化していることなどを踏まえ、1)国民が考える医療政策の緊急課題、2)医療に対する満足度や不安、3)制度選択を含む政策立案に不可欠な情報である「医療費の財源」や「国民の価値観」についての現状、4)これら全ての基盤となる「信頼度」について、特に重点的に聞きました。

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また、制度開始から10 カ月を経た後期高齢者医療制度については、国民世論と政策実行プロセスの関係、メディア報道の影響、制度設計のあり方などについて詳しく知るために、独立した項目を設けて質問を行いました。

■調査結果のポイント
 医療費に不安86%:若者中心に不安広がる-厳しい雇用・経済情勢を色濃く反映
 後期高齢者医療制度-70 代以上で現行制度に最多支持
 医療政策で期待する政党-「期待する政党なし」最多32%、2 位は「民主」17%
 政治・行政に強い不信-「信頼できない」厚労省78%、最低は政党・国会議員84%
調査結果の概要 プレスリリース「日本の医療に関する2009年世論調査(第二版)」概要


■メディア掲載(抜粋)
・「『医療費払えない』86%が『不安』若い世代中心に増加」 2009/2/20 NHKニュース「おはよう日本」
・「後期高齢者医療で民間調査 70代以上が制度を最も支持」2009/2/20 共同通信
・「医療費不安 2年で5割増」2009/2/22 朝日新聞朝刊
ほか全国25以上の媒体で報道されました。

なお、当機構事務局長補佐、医療政策担当ディレクターの小野崎耕平が2月27日(金)に放映された「朝まで生テレビ!激論!ド~する?!医療崩壊」(テレビ朝日系)に出演いたしました。番組では今回の世論調査結果が数多く引用されました。
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by hpij | 2009-03-05 16:35 | 医療政策関連