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第20回定例朝食会「医療の基本に立ち戻る時 ~新年を迎えて」  (黒川清)
日本医療政策機構は、2009 年1 月7 日、第20 回定例朝食会を開催致しました。今回は当機構代表理事黒川清が「医療の基本に立ち戻る時 ~新年を迎えて」と題して医療政策から日本の産業政策まで、さらには黒川自身の「元気の秘訣」も交えて講演させて頂きました。早朝から多数の皆様にご参加頂きました。誠にありがとうございました。

b0144534_11211540.jpg経済の落ち込みが招いた「医療崩壊」の顕在化

最近、「医療崩壊」が流行語にさえなり、いよいよ政治家も動かざるをえない状況になってきました。しかし、医療崩壊は、決して流行語になるような問題でも、昨日今日生まれた問題でもありません。

医療は、経済と密接な関係にあります。バブル経済の頂点であった80年代後半までは、日本は右肩上がりの景気に支えられ、設備投資、インフラ整備、そして医療をはじめとする社会保障などに対する支出をなんの不自由もなく行っていましたが、景気後退とともに対応が困難になってきました。にもかかわらず、医療の受益者である国民は、どうしてもバブルまでの右肩上がりの感覚で医療に期待をし、医療への不満は日々募るばかり。たとえば「モンスターペイシェント」と呼ばれるような現象は、積み上がっていった不満が顕在化したものと言ってもいいでしょう。医療崩壊は、経済の落ち込みと時を同じくして生まれていたのです。

また、高齢化社会を迎えている日本にとって医療や介護は、社会の安定に資するきわめて重要な課題であり、キャピタル、つまり社会的共通資本だとの認識が必要です。加えて雇用の不安が急速に膨らんでいる現在は、医療の重要性は日々増しています。国民一人ひとりが「心配で身動きがとれない」との思いを抱えているのでは、国の未来が明るいものになるはずはありません。

医療におけるアメリカ崇拝は大間違い

私が、ほかに好ましくないと思う最近の傾向のひとつに「アメリカ崇拝」があります。アメリカは先進国の中でもっとも医療制度がうまくいっていない国ではないかと思います。けれども、なぜか医療制度についても「アメリカに学べ」との声が、常にどこかから聞こえてくる。

たとえば海外勤務で数年過ごされた方ですと、医療保険も会社から万全の体制で用意されて赴任されています。そのような環境下で暮らしても、アメリカの医療制度の実際はなかなか実感できないでしょう。もし、アメリカで職を失ってみるか、あるいは低所得者にでもなれば、あの国の医療制度がいかに厳しいか痛感するはずです。 医学や医療の関係者も同様です。留学生や研究員として短期間滞在しただけですと、実際の医療現場を見知る機会は非常に限られています。「アメリカの医療制度はすぐれている」などと安易にいうのは避けなければなりません。

医療制度はヨーロッパを参考に

近ごろようやく、医療制度は「ヨーロッパに学べ」との意見が出るようになりました。

イギリスは、70年代までの「世界に誇る」医療制度がサッチャーイズムで崩壊にいたりました、ブレア政権下で急激に再建を果たしています。そこから、日本が学べることもあるはずです。ブレアの医療制度再建はすべて税金で賄う手法ですが、無闇な税投入を防止する政策評価システムの導入も同時に行っています。刮目すべきは、政策立案や政策に必要なデータ収集、検証が、役所のみならず、さまざまなインディペンデントな機関の関与によって進んでいる点。政策立案、実行プロセスの透明性を、日本はぜひ参考にすべきでしょう。

医療制度に大きな影響を及ぼす医師配置についても同様です。簡潔に言えば、医師配置に関して、ヨーロッパは日本よりも厳格です。ドイツに代表されるように、医師免許を取得した者は、勤務地、開業地も、自由意思だけでは選べない。国内のどの地区に何人の医師を配置するかは基本的に国の管理下にあり、空きが生まれたところには、きちんと医師が投入される仕組みになっています。つい昨日まで「医師は過剰だ」と言われていながら、今日になると「医師不足が問題」と喧伝される日本が見習う点が大いにあると思います。

ちなみに、医療制度の基本理念に基づき、一貫した方針で医師の配置制度を構築している例は、アジア諸国を見ただけでもいくつも確認できます。たとえば、マレーシアやタイでは、医学校を卒業するとまず5年間はへき地に行きます。日本でも、同様の制度を検討し始めてよいのではないでしょうか。

「医療基本法」の制定を
 
最近の医療政策議論やさまざまな検討会の報告書などを見ていると、首をかしげてしまうものも少なくありません。たとえば、「医師を増やす」と言っても、増やした医師をどのように配置するか、あるいは医師の質の維持をどうするかまでは言及されたものは多くありません。医学教育についても、もっとこれまでの取り組みを検証し反省すべきである。医師不足を解決するのに大学医学部の定員数を増やせばいいというのは、あまりに単純です。新たな入学生が医療現場に出るには、10年はかかる。その間は、どうやって不足を補っていけばいいのか。
このような現状を考えると、まずは医療に関して議論する際の基本法の制定も検討すべきだと感じています。基本理念や大原則を定める基本法がないから、ビジョンのない政策になってしまうのです。
 
求められる地域のコミュニティー

かつて安倍政権下で策定された「新健康フロンティア戦略」のような国家の健康戦略を実現するには、地域コミュニティーの再生が必要です。

日本は今、都会、地方を問わず核家族化と少子化が進み、なおかつ高齢者が増えています。結果として何が起こったか?コミュニティーの消失です。コミュニティーが消え、再形成されないがゆえにさまざまな弊害が生まれてきました。たとえば、あらゆる「知恵」が世代を超えて継承されなくなりました。若い親たちは、子どもが夜に発熱しただけでオロオロする。そして病院に駆け込むわけです。もし、子育て経験のあるおじいちゃんやおばあちゃん先達がそばにいて、「これは、様子を見ればいい」、「これは冷やせばすぐ治る」とアドバイスをすれば、病院に行かずとも済むケースが多くあるでしょう。いわゆる「家庭力」が低下してしまったのですね。家庭力の低下を補うには、地域コミュニティーの団結力を高めるのが最も有効だと思います。

地域コミュニティーの団結力をつくる方法のひとつとして、全国に2万2000ある小学校の活用を提言しています。小学生でも自宅から行ける距離にある小学校は、あらゆる人にとって集まりやすいのです。  地域の人たちが、時間が空いたときに小学校に集まる。教師は授業をし、地域の人たちは子どもたちを支える活動をする。共働きの家庭の子は、6時まで学校で予習や復習をすればいい。もちろん部活動をしてもいいし、お年寄りが加わっていっしょに何かをするのもすばらしい。地域に大学があるなら、たとえば学長を筆頭に職員や学生が、地域住民が集う場に年間20時間程度ボランティアで参加することにする。こんな活動をすれば、コミュニティーの輪はいっそう広がるでしょう。

そもそも病院とはどんな存在なのか 

HotelとHospital、Hospitalityの3つの英単語に、何か共通するものを感じませんか?ある識者の見解によれば、病院は医師が誕生する以前からあった概念だそうです。病気は人類発生とともに生じ、医師などいない時代から厳然とあったのですから、まず病人にベッドを提供し、誰かが食事を提供する場所があったに違いない。つまり、Hotelのような施設がHospitality を発揮することで医療が始まり、次いでHospitalが成立したと言うのです。そのような考え方に照らせば、病院で患者をケアする医師や看護師を、単に病院に「勤務する」人材であるとだけ解釈するのは、間違っていると言えないでしょうか。

地域には必ず開業医がいますが、昔のように自宅兼診療所といったスタイルでは開業していません。したがって、夜間に具合の悪くなった家族がいても、連れて行く先がない。必然的に病院には、「病院に行けば、いつでもお医者さんがいる、看護師さんがいる」といった態勢が望まれるわけですが、そうなっていないのですね。どの病院も、「病院の医師や看護師」を「病院に勤務する医師や看護師」だとして扱っています。

また、病院が地域の小児科医と連携して勤務医不在の時間帯を埋めれば、地域の子を持つ親は「あの病院には、いつでもお医者さんがいてくれる」と安心できる。もちろん、産婦人科や外科も同様のやり方で充実させられる可能性があります。「開業したが、十分な施設を整えられなかった」医師には、病院の設備を提供して自身の患者さんの治療をさせてあげればいいではないでしょうか。実は、そうした施設や人員のやりくりは日本以外の国では常識です。

これらのアイデアは、第5次医療計画の骨子に盛り込まれているのですが、残念ながら実現していません。

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大転換を図るべき時代にある日本

医療、社会保障、教育の国家予算は、もっと増やすべきです。現状は、あまりに少なすぎます。となると、問題になるのは日本の経済成長ですが、現在、世界的に金融が傾き、日本にも影響が押し寄せています。しかし、私はむしろここから1年が、長い低迷に沈んだ日本経済を再生させる千載一遇のチャンスだと思っています。

私は以前から、文明や帝国の「rise and fall」は60~70年サイクルだと述べてきました。日本国の歩みを振り返ると、明治維新からここまで、GDPは平均年4%で伸びている。もちろん浮き沈みはあります。ご存知のとおり戦後の日本は驚くべき経済復興を果たしましたが、1900年代はとうとう成長しなくなりました。

今の日本は、まさに明治維新前後、戦後と同じ、大転換を図るべき時代にさしかかっています。サイクル的に考えても、もし、ここでの大転換が果たせなければ、日本の再生はきわめて難しいのではないかと思うのです。

環境産業でリーダーシップを

多くの方に経済、産業の側面から見た「日本の強みは?」と問えば、どんな答えが返ってくるでしょうか。おそらく「ものづくり」という答えが多いのではないかと思います。けれども、それでは答えにはなりません。単なる「ものづくり」、単なる「部品屋さん」では、もはや成長できません。世界のリーダーシップを握れるような産業構想がなければ、これからの日本の経済を成長させることはできないからです。

日本には世界的に評価の高い、すぐれた環境技術があります。しかし、技術が高いだけでは世界レベルでの貢献はできません。必要なのは、世界を視野に入れたグランドデザイン。高い技術力を生かして、いかに世界に貢献するビジネスモデルを構築し、国策として世界市場に乗り出す。大転換を図るための、それが私からの1つ目の提案です。

日本は食料の純輸出国になれる

2つ目の提案は、農業への取り組みです。近年、地球上の食料問題は、深刻な事態になっています。にもかかわらず、日本は総計で埼玉県に匹敵する面積の休耕農地を抱えています。農地を使って穀物をつくり、国内需要を超えた分は輸出すればいい。当面は、付加価値の高いブランド米からでもいいので輸出に転じるべきです。

私の試算では、2020年までに食糧自給率を70%にし、2030年までに100%にすることは可能で、以降、数年もあれば日本は食料の純輸出国になれる。同様にクリーンエネルギーも2020年までに自給率50%、2030年までに自給率100%とし、輸出に転じることができるはずです。それくらいの国家ビジョンがなければ、医療や教育の予算を増やす政策にたどり着くのは困難です。

「日本の強みは?」と問われ、「ものづくり」と国民が即答するような状況はいかがなものか。世界に貢献する日本のイメージをもとに、しっかりとした戦略を持って行動し、発信しない限り近い将来、世界からまったく相手にされず、結果、経済的にも成功できない国になりかねません。

政策も経営も若い世代に託すべし

私は、これまでさまざまなかたちで政策提言にかかわってきましたが、変わらず言いつづけてきたのは、「5年計画、10年計画の政策立案には、45歳以上の者は参加するな」。政策立案だけでなく企業経営に関してもまったく同様です。将来を展望するのに、老重役の意見など盛り込んでもろくなことはありません。

「私たちは先に死ぬ人間である」との認識のもとに、下の世代が夢を持てる社会を構築し、若い人を育て、彼らの新しい視点から生まれた柔軟な意見を政策に反映すべきです。
 
私は、今の日本を幕末の日本に重ねています。ペリーが来航し、国中が大騒ぎになり、いったんは尊皇攘夷が国論となりますが、気づくとみんな開国派になっていた(笑)。悪く言えば信念の欠如ですが、その変わり身の速さは結果的に国を富ませました。振り返れば、日本は、方向さえ決まれば柔軟に変われる国なのです。変われない理由を強弁するのは、一部の守旧派だけ。現代では、団塊の世代がそれにあたるでしょう。私から、団塊の世代の方々へは、「邪魔をしないように」と申し上げたい。「あなたたちの常識は、60年間、黙っていても成長した時代の常識で、もう通用しないのだ」と。

私たちの先祖は、一度徹底的に黒船に締め上げられましたが、結局はそれをバネに明治維新を達成しました。当時のような国を再建するに足るエネルギーが、この日本にまだ埋蔵されているか否か。今、私がもっとも心配していることです。


質疑応答


会場――医学部の4年生です。医療制度の変更について、いろいろ気になります。初期臨床研修が2年から1年になるとか、医学部定員が増やされるなど――。医療現場の現状に即した政策転換であると頭ではわかっているのですが、一方では、医学生が将棋の駒のように扱われる不快感がぬぐえません。

いったい国は、どのような医師を養成しようとしているのでしょうか。

黒川 おっしゃることはよくわかります。役所は、次年度の予算確保しか考えていないので、彼らだけに任せている限り10年先、20年先こうなります、こうしようという話は聞けないでしょう。

初期臨床研修制度の変更について、「新制度のせいで、使いものになる医師が2割減った」などと言い立てる人もいるようですが、そういう人たちは、自分の都合で叫んでいるにすぎません。上に立つ者が、中長期的な将来像を描いて、学生や国民に夢を抱けるようにしなくてはなりません。

研修制度に関しては、今、私は研修医の横断的な組織をつくりたいと考えています。研修を受ける研修医自身の意見を述べられる場があってしかるべきだと思うからです。

会場――黒川先生の、その元気の秘訣をご披露ください(笑)。

黒川――元気の秘訣と問われても――、強いて言えば気になる問題が頭の中にあると、夜中でも起き出して考えたりすることでしょうか(笑)。人間、活発に頭を働かせていると老化が遅くなるものです。

ぜひご紹介したいエピソードがあります。最近、あるサイトで、ある中国人ジャーナリストの書いた文章を読みました。彼は20年ほど日本に暮らしていたそうで、サイトには、だいたい次のように記されていました。

「朝の通勤ラッシュ時のプラットホームで、乗車口の印の前に3列の列ができている。その隣には次の電車を待つ3列が、また隣にはその次の電車を待つ3列が整然と、誰に指示されるわけでもなくできあがっていて、ひとつ目の電車が出て行くと、残った列がズルッとずれていく。エスカレーターに目を転じれば、必ず片側が空いていて、急ぐ人が通れるようになっている。自然と秩序が維持されている状況には感嘆するばかりで、結局、中国は日本に勝てないのではないか。上海や北京に富裕層が生まれてはいるが、とうていそのような振る舞いは中国人には期待できない」と。

日本と日本人には、美しいところや賞賛できるところがたくさんあります。しかし、日本人はいつしか自信を失い、誇るべきものを持っていることを忘れ、結果として次の世代に日本の美徳が引き継がれず、少しずつ美しい国が崩れつつある。そうした日本人の今のありように私は怒っています。

たぶん、私の元気の秘訣は、若さではなく、怒りなんですね(笑)。怒りを収めようとして解決策を考えはじめると、夜、寝ていてもやっぱり目が覚めてしまいます(笑)。
それから、私の年齢を聞いて、びっくりされる方は確かに多いです。しかし、日野原先生とくらべれば、まだまだ足下にも及びませんから(笑)。

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by hpij | 2009-02-05 10:56 | 医療政策関連
ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院からの訪問
b0144534_18241790.jpg2009年1月、米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院の大学院生の皆様が、日本視察旅行である「Japan Trip」の一環で日本医療政策機構を訪問されました。なお、当機構での海外大学視察団の受け入れは、ハーバード大学公衆衛生大学院(2006年、2007年)に続き2校目となります。

日本の医療制度の現状や特徴、また、日本の国民世論の動向や政策決定プロセスについて、先進諸国との国際比較も交えながらお話しさせて頂きました。

ご参加頂いた学生から、様々なフィードバックを頂きましたので、以下に一部をご紹介いたします。

■「日本医療政策機構の活動に深い感銘を受けました。また日本の医療システムの概観と医療政策の現状についても教えて頂きありがとうございました。」

■「非常に興味深いプレゼンテーションで、日本の医療システムに関する理解が深まりました。」

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by hpij | 2009-01-27 11:55 | 医療政策関連
第19回定例朝食会「これからの外科医、これからの日本の医療」     (大木隆生先生)
日本医療政策機構は、2008年11月13日、第19回定例朝食会を開催致しました。今回は東京慈恵会医科大学外科教授・統括責任者、米アルバートアインシュタイン医大血管外科教授の大木隆生先生に「これからの外科医、これからの日本の医療」と題してご講演を頂きました。早朝から多数の皆様にご参加頂きました。誠にありがとうございました。

<大木先生講演要旨>
b0144534_15514597.jpg私は今、アメリカと日本の両国で外科教授を務めています。2006年までの12年間は、アメリカに在住し、アメリカのみで働いていました。そして、現在の軸足は日本にあります。日米両国で教授職を経験したのは、黒川先生をはじめ、限られたごく少数の者でしょう。そんな経験から見えてきたものがいくつかありますので、本日はそれらを軸にお話しします。

収入と幸福度は正比例しない

医師は有り余るほどの給与をもらう必要はないと、私は考えています。医師を志したのは中学生の時ですが、その頃から直感的にそう思い、そして20数年医師として働いてみて改めて確信も得ました。

人は水なしでは生きられませんが、そうですね1日の所要量である2リットルもあれば十分に暮らせるでしょう。2リットルあるか0.5リットルしかないかは、かなり深刻な問題になりますし、まったくなしでは命にかかわる。ですが、1日に200リットルあるのも、2リットルあるのも、幸福度としては違わないでしょう。そういう意味でお金は水に似ています。

アメリカでの私の年収は、最終的には1億円ほどでした。現在、慈恵医大での給与は、その10分の1にも届きません(笑)。医師になりたての頃と、渡米して最初の2年間は無給医でした。そんな給与の乱高下の経験を通して実感したのは、生活に困らない収入、すなわち「衣食足りれば」それ以上の収入は人の幸福度と相関しないという事です。「衣食足りる」程度の収入がある場合、幸福度や充実感を決定するのは後述する「人に喜ばれる事」や「社会貢献」などを通じて得られる「トキメキ」や、家族以外に喜びや悲しみを分ち合える仲間の存在の有無だと確信しています。個人的には、東京で家族4人で暮らすなら年収1000万円もあれば十分だと感じます。

実は、こうした価値観が、今後の日本医療のありようにおいて大きなカギになるだろうと確信しています。この点をまず、頭の隅に置いてお話を聞いていただければと思います。

表面だけ見てアメリカ医療を褒める愚

現在、日本の医療に関して思っているのは、「欧米の医療の良いところ取りはだめ」だということ。最近の、日本の一部の患者の行動、並びにメディアの報道姿勢は、例えていえば、エコノミークラスの料金しか払っていない乗客が、ビジネスクラスの待遇を要求しているかのようなものです。日本の医療が先進諸国にくらべて劣っていると思い込み、もっといい医療をしてほしいと感じている。日本国民にぜひ知ってほしいのは、アメリカ人は日本人と比べて、年間約3倍の医療費を負担しているという事実。日本人の負担額は年間で平均23万円ほど、対してアメリカ人は約70万円です。まさに、東京‐NY間のエコノミーとビジネスクラスの料金の違いほどの開きがあるのです。

アメリカの医療は、ビジネスクラスの値段ですから丁寧なサービスも可能でしょう。しかし、日本ではエコノミークラスの料金でビジネスクラスのサービスの提供を強いられている状況にあります。実際に、本邦の病院のベッド当たりの医師・看護師の数は米国の1/5です。日本ではただでさえ手薄なスタッフが、近年は1人の医師が30人、40人という患者を、1人の看護師が5人、10人と患者を抱えています。

医療訴訟に関しても同様のことが言えます。日本では近年アメリカに倣っているのか、患者が医師や病院を相手に訴える風潮が強まっています。しかし、3倍ものお金を出している人たちが受けている医療と、そこで起こっている訴訟をモデルに、「何かあれば訴えるべき」とやられたのでは、たまりません。特にメディアが「アメリカに行って取材してきました。アメリカではこんな丁寧な医療サービスを提供していました。一方、日本では3時間待ちの3分診療です」と煽るのには辟易します。

アメリカでは医療=ビジネスでしかない

本邦にも症例数などを指標に、医療に経済的インセンティブを持ち込もうとの意見があるようですが、大いに疑問を持っています。これもまた、アメリカ医療の一側面だけを見た考え方だからです。アメリカでは、医療の評価をお金でします。医療はまさにビジネス、市場原理で動く。メーカーや病院や医師も、保険会社もです。

アメリカにはメディケア、メディケイドと呼ばれる公的保険・公的扶助の制度がありますが、加入者は全人口の2割程度。貧困層、障害者、あるいは65歳以上の高齢者のみが対象の公的保障だからです。それ以外の人はすべて、自動車保険、あるいは生命保険を買うのと同様に民間保険会社から健康保険を購入しています。

保険会社の最大の責務は、株主への配当還元。株式会社ですから当然でしょう。きれいごとを並べても、基本的に会社は株主のために存在する。したがって医療費をいかに削減し、利益を出すかといった目標を持ってビジネスを展開します。

アメリカでは医師が、診察した患者について「これは癌かもしれない」、「これは動脈瘤かもしれない」と見立てても、「ではCTを撮りましょう」などと簡単には言えません。CTひとつ撮るにも、まず保険会社に文書で「貴社の会員の○○さんのCTを撮りたいが、よろしいですか」とおうかがいを立てねばなりません。大手保険会社には数百人の医師が在籍しており、彼らはその申し出を断るために働いています。学んだ医学知識を駆使し、医学的に不必要との結論を導き出そうと躍起です。なぜなら、申し出を拒否できる理由を見つければ見つけるほど、給料が上がるシステムになっているからです。そのような制度と対峙しながら、なんとかしてCTを撮り、なんとかして手術をし、より多くの手術をすれば、それだけ外科医の収入は上がります。――でも結果が、患者は何か問題が起これば訴訟。医師が本来の志しを失わずに使命感を原動力として活動し続けるには、きわめて厳しいのがアメリカの実際の医療環境です。

飽くなき利益を追求する病院、儲け最優先の保険会社とメーカー、インセンティブにどっぷり漬かった医師――それがアメリカの医療。もちろん、中には聖人君子と呼べる医師もいますが、総じてビジネスとして医療とかかわっています。

制度だけを真似しても失敗するだけ

そんな状況ですから、当然、患者は医療者や医療機関に対して不信感を抱く。患者は、「この医師はもしかしたら、もっと儲けようとして手術を勧めているのかもしれない」、「信頼できないから、やはりセカンドオピニオンを求めよう」と疑心暗鬼になる。まさに、医療不信が蔓延している。ただ、アメリカ人は、医療もビジネスなのだと理解し、その状況を当たり前のこととして受け入れています。

アメリカの、そんな感覚を、そんな制度を、無批判に日本に持ち込んでいいのでしょうか。インセンティブの導入とは、言ってみれば「ぶんどり合戦」。アメリカで、そんな制度のもとでも犯罪が多発しないのは、医師が「金を儲けてやろう」、「不要でも手術をしてやろう」と思っても、セカンドオピニオンを容易に求められる、簡単に医療訴訟を起こせる、保険会社が医師を雇って医学的にその医療行為が必要かを判断させる、病院には医師の資格や技量などのチェック機構があるからです。

まともなチェック機構がない日本で、症例数を競わせたり、インセンティブを与える制度などを展開すれば、「必要ないけど、やっちゃえ」が、まかりとおるのは目に見えています。結局のところ、最後に割を食うのは患者ということになります。

私はあえて、「日本は日本なりの中庸さが良いのだ」と言いたい。良さそうなところだけをつまみ食いするようにアメリカの制度を日本へ導入しようとしても、日米には大きな制度の違い、国民性の違いがある。うまくいく道理がありません。

アメリカ医療を反面教師にすべきb0144534_1553360.jpg

さらに言えば、アメリカ医療の実情などは、反面教師にすべきでしょう。飽くなき利益の追求を第一義にした資本主義が、結局のところ多くの無駄を生んでいる点などがそうです。

現在、アメリカの医療費の30%は間接経費、つまり事務経費等に消えています。日本の医療費の総額が33兆円で使いすぎだと大騒ぎになっていますが、その額を軽々と超える金額が事務経費に消えている。恐るべき事実です。ぶんどり合戦の果てに、申請やチェックの「いたちごっこ」が展開された結果、こうした事態になっているのです。

アメリカ医療に対する誤解には、技術料に関する点でも挙げられます。日本では、名のある外科医が盲腸の手術をしても研修医がしても技術料に差がない、対してアメリカでは違うとの指摘がありますが、間違いです。アメリカでも、盲腸の技術料に医師個人の技量によるクラス分けなどありません。誰がやっても料金は同じ。ただ、「アメリカの専門医が高給を取る」は事実で、それは専門医の数が限られていることに起因しています。

アメリカには専門医の数に上限を設ける制度があり、新しく専門医となれるのは、心臓外科医ならおよそ年間130人、血管外科医は110人、脳外科医だったら60人と決まっています。これは、全米での定員です。脳外科医の定員枠に入ろうと競争を勝ち抜いた60人は、専門医としての競争相手が少ないので多数の手術を手がけられ、高収入が得られるのです。一方、日本にはこの様な上限設定がありません。ちなみに日本には、米国の2倍以上の脳外専門医がいます。
 
医師の使命感と志しをマスコミがずたずたにした 

さて、日本の医療が崩壊しつつあると言われていますが、日本の医療崩壊は勤務医、急性期医療に関してであって、開業医の数は減っていません。勤務医が開業へ逃げているから、病院から産科医や外科医、小児科医がいなくなっているだけのことです。勤務医はがんばっていますが、がんばりが限界にきて、開業という道に逃げ込むために病院で医療崩壊が始まってしまった。

なぜ、勤務医が開業医になってしまうかと言えば、医師の使命感、志しといったものを日本国民とマスコミがズタズタにしたからに違いないでしょう。そして「お前の診断を聞いたけど、ちょっと隣の病院へも行ってみるよ。気が向いたらまた戻って来るかも」――といった態度の患者や、何かあるとすぐに「医療ミス」ではないかと疑う患者が激増し、勤務医は「この薄給で懸命にやっているのに、こんな扱いを受けるなんて、ばかばかしくてやっていられない」となりました。最終的には「もう辛い勤務医は辞め、比較的収入の良い開業医になろう」という流れができたわけですね。でも、最近は開業医も医療費抑制政策と過当競争の為に大変苦労しているようです。

日本の急性期病院を再生するには、厚生労働省が言っているような医師の定員増だけでは全く意味がない。例えるなら「穴の開いたバケツ」。いくら医師を注ぎ込んでも開業医へ逃げる穴が開いているのですから、産科医も小児科医、外科医も病院には留まりません。

では、どうすれば良いのでしょうか。やはり、やり甲斐、使命感を復活させるしか方法はない。「ありがとうございました。先生のおかげで命を長らえました」――その感謝の一言が医療の現場に戻ってくるだけで、医師は頑張っていけるのです。

医療再生に必要なのはトキメキの伝授

私は、外科医局員205名を預かる者として、いかに外科を再生するかを日々考えています。
考える中で、いくつかの具体的な方策が浮かびました。そのひとつが、医局における村社会の形成です。アメリカ社会のような利害や共通目的を中心に結びついた「ゲゼルシャフト」ではなく、いわゆる友愛をベースとした「ゲマインシャフト」の医局を創る。学生時代の運動部の夏合宿、あの雰囲気の漂う医局ですね。お互いをおもんばかり、喜びも悲しみも分かち合う。今、言われているような「外科医の技術料を」や、「インセンティブを」などとは、真っ向から対立する方策(笑)。時間が証明するでしょうが、恐らくこれが外科医療再生の要になるはずです。

私が慈恵医大に戻って2年少々たち、以前まで1年に4~5人だった外科への入局者が、来年は24人にまで増えました。ビタ一文も給料を上げてはいません。労働条件を良くしたわけでもありません。ただ単に学生や研修医に、外科医がいかにトキメキを得られる職業なのか、患者に感謝されるのか、それを訴えた結果です。

本日は、皆さんにお見せしようと、私が受け取った患者からの手紙の束を持参しています。今年上半期だけで、これだけの手紙を受け取りました。すべてが感謝の手紙です。「先生の手術を受けられてこんなに嬉しいことはない、涙が止まらない」――こういう手紙をいただくと、1週間ぐらいは元気に走れる(笑)。これが外科医であり、医師なのです。
外科医が得られるトキメキを若者に身を持って示し、また医局に村社会のような安らぎと明るさを取り戻せば、給料を上げなくても、労働条件を良くしなくても、若い人は外科医療を通じて得られるトキメキを求めて集まってきます。慈恵医大外科学講座の目指すものは「トキメキと安らぎのある村社会」です。

帰国して収入は減ったが充実度は上昇

私の給与の推移を表したグラフを見てください。青い線で示したように、研修医のゼロから始まって、ちょっと上がったり下がったり。アメリカに行って無給医となり、教授になる過程で一気に上がり、慈恵に戻ると10分の1ぐらいに下がりました。
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対して赤い線が充実度を示します。研修医時代、充実度は上がったり下がったり。少しして落ち込んだのは、自分が医師に向いているか否か悩んだ時期です。その後、いろいろな手術を覚えるとともに充実度はアップ。アメリカに渡った直後は、留学ブルーになって落ち込みますが、後に、給料や地位、自分への認知度が上がるにしたがって再び上がっていきました。

しかし、そこからは傾向が逆転します。給料や地位が上がるに比して、充実感は下がっていった。自分の本拠地である日本の患者を治療したいとの気持ちが芽生えたからです。なぜ、私はニューヨークでアメリカ人の命を救っているのか。なぜ、アメリカ人の教育をしているのか。疑問に思う気持ちが膨らんでいきました。ですから、日本に帰ってきて給与が下がっても、むしろ充実度は増していきます。日本の患者にわずかに残っている医師に対する感謝、手術に対する感謝が、私をやる気にさせてくれたからです。後進の育成にしても、外国人の教育ではなくて日本人の、母校の後輩の教育にたずさわれる喜びが、私の充実度をアップさせました。

医療を崩壊から救う唯一の方法

平成16年と平成20年の、慈恵医大における診療科別の診療報酬を比較したグラフを用意しました。足かけ2年で、血管外科を30数科ある診療科でいちばんの業績をあげる科にしました。これで私の給料がいくら上がったかと言ったらゼロ。一方、私の生活はアメリカ時代とは激変し、ボロボロ(笑)。夜帰るのは朝の3時か4時で、出勤は7時前ですので、子どもたちが寝ている時間にしか家にいない。週末も働いており、子どもの顔を見られるのは月に2~3回くらいです。

これほど忙しくなって診療実績が出ても給料はビタ一文変わらない、しかも家族を犠牲にしているのに幸福を感じるなんて馬鹿だ――これがアメリカ人の価値観でしょう。しかし、アメリカ人には理解し難いところに喜びを感じる点にこそ、日本の医療、外科医療の再生のポイントがあるのです。

お金のためではなく、人のために尽くしたい、人に喜ばれたい、そういう気持ちを医師からうまく引き出しながら、現在の医療の問題点を反省しつつ過重労働や多すぎる雑用などの問題を改善していく。昔の日本の医療にあった医師の使命感と志しを、今こそ再興すべきです。それと「村社会」的な安らぎのある職場環境の創出です。私は、それらこそが病院医療を崩壊から救う唯一の方法ではないかと思っています。


質疑応答

Q:今の若い人に、村社会、医師の美徳と言って果たして通じるのでしょうか。

A:通じます。我々がそうだったように、今の若者も変わらず、やり甲斐を求めています。人に喜ばれたい、社会貢献したいと思う人間の本能は今も昔も変わりません。先ほどお話ししたように、慈恵医大では労働条件は一つも良くしていないのに外科入局者が激増しているのが、その証左でしょう。

Q:日本の医療政策には根幹となるものがないと感じています。たとえば、医療の基本理念などを定める「医療基本法」をつくろうとする動きもあるのですが、先生はそのあたりを、どうお考えでしょうか。

A:確かに日本の医療には、グランドデザインがありませんね。一般的に、日本の官僚のやることには、多にしてビジョンがない。医療だけでなく、外交や教育に関しても同様。官僚すべてが悪いとは言いませんが、日本の行政には、国家百年の計を考えての国づくり、医療のかたちを考える視点を持った志ある人が、勝ち上がれないシステムができあがってしまっているのでしょう。
すべてを僕に任せていただければ、今より良い医療環境をつくれる自信はあります(笑)。


<当機構代表理事/黒川清よりご挨拶>
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日本人は、アメリカ礼賛がすぎる

大木先生のお話には、共感する点が多くありました。日本人は、アメリカ礼賛がすぎると思います。こと医療制度の問題に限らず、聞きかじった「アメリカのすぐれたところ」を訳知り顔に賞賛する有識者があまりにも多い。彼らのほとんどは、実際にはアメリカでの生活経験などない。滞在経験があっても、ごく僅かでしょう。アメリカ社会の実像も知らず、なぜそんな仕組みになっているかの因果関係も知らず、「アメリカでは……」とのたまう人たちの罪は、あまりに重いと感じています。

そのような意味でも、大木先生は非常に貴重な存在でしょう。アメリカ社会で過酷な生存競争を勝ち抜き、教授に上りつめただけでなく、社会制度を熟知するほどの濃密な生活を送り、全体を理解したうえでアメリカを評価も批判もしているのですから。

トップにこそ求められる「武士道」

アメリカ帰りの大木先生が、「人の満足は、お金では満たせない」とおっしゃる。比して日本では昨今、インセンティブ大流行で、社会が日増しに下品になりつつあります。
最近、日本人が失ってしまった精神として「武士道」が頻繁に言われます。この言葉は、新渡戸稲造さんが、宗教を持たない日本人の倫理観を分析した著述に登場するもの。実は、その著述は欧米向けに英語で書かれ、日本語訳されたのは戦後でした。つまり、ほとんどの日本人は、戦後に英語の訳を通じて武士道の存在を認識したのです。

それまで多くの日本人が武士道を知らなかったのは、江戸時代末期ごろ武士道に則って生活していたのが、国民全体の約6%程度にすぎなかったから。一握りの武士以外は、たいていは農民や商人で、武士道とは無縁の生活でした。

今、「武士道」を声高に口にする人々には、「言葉の背景を知り、本当の意味を理解しているのか」と私は問いたい。武士道とは、つまり、少数のエリート層に必要な精神なのです。そこで、あらためて私は、「武士道が大切なのだ」と申し上げたい。その対象は、日本社会を動かす人々、役人や政治家、大企業トップなどの方々です。

日本社会に少なからず影響を及ぼす人々に、「何かあったら腹を切る」覚悟がないのが、今の日本におけるいちばんの問題。上に立つ者として、若者のロールモデルになるべき人々が、武士道に則った振る舞いをしないのが、日本の元気のなさの原因になっていると確信します。
 
医師をめざす人には必ずパッションがある

白州次郎さんは、「教育とは先生が教えるものではない。教えるべきことを、先生が普段の行動で体現し、子どもに見せて伝えるものだ」と言っています。それこそが、まさに真の教育ですね。医師の教育も同じです。少なくとも今の医療界は、大木先生のような熱く語り、自ら発した言葉を実践する教育者、すばらしいロールモデルに恵まれたと言えるでしょう。

城繁幸さんの著書『若者はなぜ3年で辞めるのか?』には、今の若者たちに元気がないのは、迷っているからだと書いてある。大企業でサラリーマンになるのが必ずしも正解ではないとわかっていても、では、どうしたらいいかの答えが出せない。そんな時代にこそ、学校には熱血漢先生が必要です。教師、指導者にとってのインセンティブとは、決してお金ではなく、「あの人はすばらしい先生だ」との敬意が、子どもたちや学生たちの間で広がり、最後にはコミュニティにまで広がり定着することでしょう。

職業として医師を選択したような人には、心の中に必ずパッションがある。パッションがあって、まわりから認められたいプライドがあって、患者やその家族からの感謝を待っている。3つ目の感謝は、社会からのプレステージ(威信・声望)につながります。社会がパッション、プライド、プレステージを生み出していく国にしなければならない。大木先生のお話をお聞きして、そう強く感じました。

■略歴
大木 隆生
東京慈恵会医科大学外科教授、統括責任者
米アルバートアインシュタイン医大血管外科教授

1987年、東京慈恵会医科大学卒。1993年、東京慈恵会医科大学大学院修了。米国アルバートアインシュタイン医科大学血管外科研究員、同大学病院血管内治療科部長、同大学血管外科部長を経て、2005年、同大学外科学教授、2006年、東京慈恵医科大学血管外科学教授、2007年東京慈恵会医科大学外科学講座統括責任者。

■コメント(日本医療政策機構 小野崎耕平)
日米両国で臨床と教育に携わる稀有な人材である大木氏。その熱い語り口は会場を大いに沸かせた。一方、参加者からは「医師だけが価値ある仕事であるかのような言いぶりはいかがか」「経済や金融の国家における重要性がわかっていないのでは」などのコメントも寄せられた。それでも、持ち前のキャラクターで圧倒的に聴衆を惹きつける姿は、新たなリーダー像を見せつけてくれた。慈恵医大外科を見事に再生した同氏の今後に大いに期待したい。
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by hpij | 2008-12-29 15:41 | 医療政策関連
"Healthy Debate"(News Letter)発行のお知らせ
日本医療政策機構では、この度"Healthy Debate"と題したニュースレターを創刊することといたしました。私たちの豊富で多彩な活動内容を4ページの冊子に簡潔にまとめ、衆参国会議員や政府・国際機関関係者などの医療政策決定者の方々にお届けしております。

このコーナーではニュースレターのPDF版をダウンロードできるほか、気になる記事の全文を無料でお読み頂けます。どうぞご利用ください。

"Healthy Debate" 印刷用のPDFはこちら
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"Healthy Debate" 発刊に寄せて
日本医療政策機構代表理事 黒川清

b0144534_1920371.jpg医療分野において、中立的な立場から幅広いステークホルダーと連携し、国民に政策の選択肢を示すこと、これが日本医療政策機構のミッションです。市民主体の政策決定プロセスを確立し、市民が主体的に政策を選択できる環境を作ることを目的としています。皆様のあたたかいご支援により、当機構は設立4年目をむかえ、国内医療政策に加えて患者会や、感染症や母子保健などグローバルヘルス課題の解決へ向けた日本の貢献支援等、活動の幅を広げてまいりました。この度、より多くの方に当機構の活動を知っていただき、「Healthy Debate(健全な議論)」を興すべく、ニュースレターを発行することといたしました。

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Contents
*紙面の関係でニュースレター本体に掲載できなかった内容など、記事の全文をご覧になれます。

○巻頭インタビュー
解散・総選挙目前!医療政策の行方はいかに。

1.勉強会「ブレア改革とその後」
――ブレア改革でイギリスの医療はどう変わったのか?

2.HPIJ政党インタビュー
――主要政党の医療政策トップに聞く

3.朝食討論会<法人会員限定企画>
第1回「医療政策の緊急課題」

自由民主党厚生労働部会長/衛藤 晟一氏

第2回「民主党の新たな医療政策」
民主党政調副会長、医療事故調査チーム事務局長/足立 信也氏

4.第1回メディアワークショップ開催
主要ジャーナリスト集結

5.第17回定例朝食会「『医療の質』を測る」
聖路加国際病院院長/福井 次矢氏

6.日本医療政策機構ミッションの具現化例
がん政策情報センター開設
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by hpij | 2008-10-30 11:17 | 医療政策関連
解散・総選挙目前!医療政策の行方はいかに。
いよいよ間近に迫った総選挙。与野党が政権をかけて激突する天下分け目の戦いは、医療政策にどのような影響を与えるのか。当機構の小野崎が答える。

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小野崎 耕平
(日本医療政策機構/ハーバード大学アジアセンター)

――福田総理辞任、そして麻生内閣誕生の医療政策への影響は?

 福田総理が立ち上げた社会保障国民会議の最終報告の内容には、大きな注目が集まっていました。しかし、総理の辞任、解散・総選挙といった流れで道半ば。少し残念ですね。一方で、舛添厚労相が留任したことで厚労省改革や医療と介護のビジョン会議などは引きつづき進むでしょう。

――福田内閣の医療政策を振り返っての感想は?

 賛否両論あるものの、医師増など医療資源投入増に向けて大きく舵を切ったことで日本の医療政策に大きな転機をもたらしたのは事実です。もちろん、長きにわたって地道な活動をつづけた医療関係者、与野党の壁を越えて超党派議連に集まった国会議員、政府関係者、メディア、そして市民や患者など、すべてのステークホルダーの力があってこそもたらされた転機なのは言うまでもありません。

――解散、総選挙がこの時期になったタイミングについて。

 経済が急速に悪化している中、まずは景気対策が優先されるでしょう。消費税増税も先送りされる見通しです。世論は緊急経済対策などを求めていますから、医療財源論の側面ではネガティブに働くかもしれません。
 ただ、問題が噴出している医療政策分野の議論が、各党の政権公約(マニフェスト)などを通じて活発化するのは明らか。この政権選択選挙は、国民が自らの頭で考えて、自らの選択で、政党なり候補者を選ぶ、政権・政策選択の大きなチャンスです。

――新政権で、何が変わる?

 これは選挙結果を見なくては、なんとも言えません。ただし、医療政策に関しては財源論と政策の優先順位を除くと基本的な方向性に政党間で際立った大きな違いはありません。我々が行った各党厚生労働分野トップへのインタビューでも「医師不足対策」、「社会保障費削減は限界」など、どの政党も重点分野はほぼ重なっています。後期高齢者医療制度への対応は異なっていましたが、麻生総理は見直しを明言しています。
したがって、選挙後の新政権では医療資源投入増の方向は踏襲され、焦点はそれらの政策実現のための財源論になるのではないでしょうか。消費税増税も視野に入れた次の大きな税制改正までは、無駄な支出の削減はもちろんですが、たばこ税は非常に有力な選択肢になるでしょう。

――提言をするとしたら?

 医療のあり方や体系をかたちづくる基本法となる「医療基本法」の制定も喫緊の課題だと思います。そして私がもっとも変えるべきと感じているのは、医療政策の決定プロセス。政府の政策を与党が追認するだけでは絶対にいけない。当機構が行ってきた世論調査でも「医療政策は市民・患者主体で決められるべき」という結果が明らかになっています。政策決定プロセスに市民や患者などあらゆるステークホルダーを参画させて、国民主体のプロセスに抜本的に変えることが必要です。
 後期高齢者の混乱は制度設計だけではなく、政策の実行プロセスで大きくつまずきました。あの二の舞になってはいけない。はじめから、是々非々でオープンに議論をすべき。そのためにも日本医療政策機構は政策の選択肢をきちんと提示していきたいと思います。
 
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by hpij | 2008-10-16 13:59 | 医療政策関連
第18回定例朝食会「仙台市新型インフルエンザへの取り組み」   (岩崎恵美子先生)
                     印刷用のPDFはこちら(日本医療政策機構ウェブサイト)

日本医療政策機構は、2008年9月4日、第18回定例朝食会を開催致しました。今回は仙台市副市長で医師の岩崎恵美子先生に「仙台市の新型インフルエンザへの取り組み」というテーマでご講演頂きました。早朝から多数の皆様にご参加頂きました。誠にありがとうございました。

<当機構 小野崎挨拶>
新型インフルエンザは政府・与党主導で昨年から急速に対策が進み、今回の概算要求でも大幅に予算が増額されている。パンデミックが起こると医療だけではなく、学校の閉鎖や食糧確保、流通、治安、交通などの分野で様々な問題が生じるが、それを解決する鍵を握っているのは県や市などの地方自治体だ。政府がいくら対策を練っても、自治体が動かなければ何も起きない、これが対策の大きな課題だろう。そのような中、率先して取り組みを進めている仙台市の事例を勉強したい。本日は医師の経験、アフリカにおけるエボラ出血熱に対する医療活動の経験、検疫所での経験、SARS対応の日本代表の経験など、幅広い経験を積み現在仙台市の副市長を務めていらっしゃる岩崎先生に、仙台市の取り組みを紹介して頂きたい。

<岩崎先生講演要旨>
「仙台市の新型インフルエンザへの取り組み」

b0144534_1529113.jpgまだ理解が浅い日本
耳鼻科医としての10数年、途上国での5年、検疫所での10年という、私の経験をもとに、感染症にはどのような対策が必要かについて話をまとめたい。まず、日本が抱える問題として、感染症に対する正しい理解に基づく系統的な対策がとられていないことが挙げられる。何かが流行すると大騒ぎして、一つずつマニュアルを作っている、これが現状なのだ。感染症ならSARS、エボラ、インフルエンザでも原則は同じ。ウイルスがどこに出てくるかをよく理解し、それに触れない・取り込まない方法を実践するのが第一である。日本では、鳥インフルエンザと新型インフルエンザの区別すらついておらず、混同されている。両者は明確に異なる。このようにまだまだ理解は進んでいない。

生活習慣と関わる感染拡大
ウイルスは空気中を舞ってくることは殆どなく、唾液などの分泌物を介して伝わる。こういったものと接する「生活習慣」が大きく関与しているのだ。例えばSARSの拡大では、中国人の生活習慣が拡大に関係あった。先進国では広まらなかったが、これは感染者との接触が先進国ではなかったことが理由と考えられている。感染症ではこのような判断を冷静に行うことが大事である。インドネシアなどの途上国において鳥インフルエンザが人間に感染した例が報告されているが、先進国では人に感染したという記録はない。それは途上国の生活習慣・衛生環境に依るものだ。ウイルスは鳥の糞中に大量に含まれ、それを吸ったり手で触ったりすることで感染するのだが、途上国では鳥は生活に密着しており直接触れる機会も多い。香港でH5N1が流行したとき疑いのある鳥は全部処分され、これによって一つのアウトブレークが封じ込められた。

新型インフルエンザがどれ程の被害を引き起こすかという詳細かつ正確なデータはないので、過去のアウトブレーク、例えばスペイン風邪などから推測するしかない。ただし、時代の背景が全く異なることに留意しなければならない。主に栄養の足りない兵士の間で流行したスペイン風邪の事例を現代にそのまま当てはめるのは早計である。また、スペイン風邪で亡くなった方の殆どが混合感染によるものだろうという話もある。こういったことも踏まえて新型インフルエンザに対応していかなければならない。

まずは医師の取り組みが必要
新型インフルエンザが怖いのは医師も一緒である。しかし、誰かがやらないと患者を救うことはできない。私はタミフルの用意を確保するという条件で、仙台市医師会を説得し、インフルエンザ対策に取り組んでもらうことを約束して頂いた。新型といえども感染したら患者はまずは近所のお医者さんに行く。そこで混合感染の有無などをチェックし、必要に応じて大学に送るなどの処置をとり、そして最終的に自宅へ帰す。また、市は医師を支援するためにコールセンターを設けて、患者が家に帰った後の相談の窓口とする。往診の医師のグループも作る。このような体制で医師会と協力して対策を進めていく。医師が感染を防ぐには、しっかり手を洗う、白衣は診察室で脱ぐ、診察室のものを持って出ないなど、基本的なことを徹底して守ることが重要だ。怖がらずに誰かが対応しなければならない。対策にやる気のある医師が仙台市にいることはとても幸いなことだと思っている。

インフルエンザは小学生から広がる
私は仙台検疫所の経験で、インフルエンザはまず小学生の間で広がっていくことを感覚的に知っていた。4年前に、インフルエンザが石巻市で大流行した時、小学校の欠席がまず急激に増えた。その経験から、インフルエンザの広がりを捉えるために小学校の欠席率を調べるのはどうかと考え、その調査を仙台市の教育委員会に提案した。週に二回、欠席者数・欠席率をクラスごとに提出してもらい、地図にプロットした。それで流行拡大の程度が把握でき、更に学校を休校にした途端に流行が止まった。こういったこともインフルエンザ対策の流行を知る上で必要な知識である。

ワクチンの料金の何%かを自治体が補助したり、ワクチンを必ず受けるような指導を徹底したりといった取り組みも今後一層進めるつもりである。新型インフルエンザの拡大を防ぐためにワクチンは重要である。インフルエンザにかかった時に新型か旧型かの判断を下すことも容易になるのだ。自治体が考えるべきことは感染が拡大しないようにするための策であり、時には強引に小学校を休校にするといった強制的な措置を取る必要もあるだろう。ライフラインに関連する企業の人たちに感染が及ばないようにするためにも、まずは小学校で止めなければならない。小学生は体力がないし清潔不潔の概念もない。

b0144534_15294336.jpg今秋から小学生への手洗いの指導を徹底していくし、養護の先生への指導も進める。しつこく繰り返してやっていくことが大事である。大事なのは感染のメカニズムを知ることであり、どこにウイルスが出てくるかをしっかり把握して正しい対策をとれば必ず感染は防げる。感染拡大防止に重点をおき、医師会とも協力して進めていくつもりである。

基本は手洗い
英国の有名な医学雑誌であるLancetに掲載された論文において、手洗いしない群、普通の石鹸で手洗いする群、薬用石鹸で手洗いする群の3つに対して感染の冬場の上気道感染の数を調べたら、手洗いしない群においてのみどんどん感染が増加し、普通石鹸でも薬用石鹸でも手洗いしている群の感染は低く抑えられていた。このようなデータからも手洗いの重要性がわかる。当たり前だが大切な基本的なことが大切だ。

<質疑応答>
Q:パンデミックになると国と地方自治体の連携が重要となるだろうが、どういう連携が必要で、その中での地方自治体の役割は何か。
A:パンデミックになる前の、患者が限局している時期は国の対策の重要性はとても大きい。感染の疑いがある人の入国を封じ込めたり、検疫所でスクリーニングして調べて早めに隔離したりといった対策は重要である。しかし、SARSやエボラと違ってインフルエンザは感染力が強く潜伏期も短い。仙台市では「発生したとわかった時点では既に広がっている」と判断して、対策を始める体制にある。自治体は自治体で淡々と感染拡大防止の体制を整え、それを寄せ集めていくことが日本全体の体制となる。自治体と国の間でやっていることに食い違いが生じないように気をつけ、国は皆が冷静になるような指導をやっていき、感染症に対する正し知識を伝えることなどに注力すべき。自治体はそれぞれが自分たちに最も適した独自の方法で対策体制を立てれば良いだろう。

b0144534_1530221.jpgQ:噂はどんどん広がるので、それに対してどういう対策をとるのかを考える必要がある。行政は情報提供する時に確かな情報かを入念に確認してから発信するが、それでは遅いことがしばしばである。情報が遅れると噂だけが広がる。正確さを求めつつも、こまめに早い情報提供をお願いしたい。
A:特に感染症において情報提供の迅速さは大事である。それと同時に、情報を出す時は必ず対応策を付けて出すように私はいつも指導している。手を洗う、人ごみに行かないようにするなど、どういう対応が必要かを付けた上で、状況を説明することが不可欠だと思う。メディアとの協力も進めているが、しつこく対策を載せてほしいということをお願いしている。情報提供と対策を必ずセットにすることを徹底したい。

Q:予防という観点からは、パンフレットなどのツールを用いて多くの方々に情報を知ってもらうことが必要だ。全くこういった情報を知らない人も市内にはいっぱいいるはずであり、そういった層にどうやって情報を提供していくか。
A:情報提供は一朝一夕にできるものではないことを強く認識している。一人ひとりが特に心がけてほしいのは、予防には生活習慣を身につけることが大事だということだ。それをやるには繰り返しが不可欠である。小学校での講演、町内会での話など、何かの機会があるにつけて我々はしつこく情報を提供している。ただ、何も起こっていない時に“もし”起こったらという話をしてもなかなかピンとこないのも事実である。そのため、発生したらメディアを100%使って、対応予防策の話を細かく伝えていくことを意識している。恐怖心をあおるのではなく、きっちりと丁寧に情報を提供したい。

Q:新型インフルエンザの対策の基本は毎年のインフルエンザ対策と同じ。特に冬はしっかりしなければならない。まずは教育委員会を利用していくことも有効である。先生が一人でやるのも限界なので、小中学校でカリキュラムを作って指導していくような取り組みも有用だと思う。
A:小学校の養護教員には今日のような話をよくしているが、そこからみんなに話が広がっているかは不明である。だから、養護教員の人たちがみんなに教えやすいようなテキストなどを作ることも考えたいと思う。

Q:日本の医療はフリーアクセスなので誰でも診療所に行けばいいと思っている。発熱外来など作ってもそれに沿って国民が行動しない可能性が大きい。それをどうしたらいいか。
A:発熱外来に行く人は恐怖心を持っている人だけで、普通の人は普通の開業医のところに行ってしまう。だから、開業医と連携することが必要となる。そのために、医師会に対してバックアップ体制をとることをしっかり保証し、タミフルの準備、後方の支援病院の確保なども我々が確実に行い、医者を支える心づもりでいる。

b0144534_15303096.jpg<当機構代表理事 黒川挨拶>
岩崎先生は日本の医療現場だけではなく、アフリカなど世界各国で活躍、そして仙台市副市長に就任するというとても個性的なキャリアを歩んでいる。仙台市長の梅原さんは自分が市長になった時に、経験豊富な女性である岩崎さんを副市長に選び仙台市の医療に関する問題を任せた。これこそリーダーの見識を示す良い例である。組織でも大学でも、できない理由を言うのではなく、どうやったらやれるかを考え、実行に移さなければならない。そのために、社会やポストで何が必要か、自分は社会に対して何をしなければならないかを考えるべきだ。日本は縦社会で、年功序列のためガチガチな体制のままだ。女性の社会進出も先進国中一番遅れており、岩崎さんのようなキャリアを積まれている女性は非常に少ない。「Independent」な女性である岩崎さんの素晴らしさは言うまでもないし、それを選んだ梅原さんも素晴らしい。くり返しになるが、これこそリーダーの見識だ。
インフルエンザが脅威であるのは間違いない。しかし、普段から手を洗う、家に帰ってきたらうがいして手を洗うといった基本的なことを広めることが第一歩なのだ。このような取り組みを岩崎さんのような百戦錬磨の方が進めていくことは大きな意味がある。

■講師プロフィール■
岩崎恵美子氏
1968年新潟大卒。1978年新潟臨港総合病院耳鼻咽喉科医長、1996年タイ国MAHIDOL大学医学部熱帯医学衛生学ディプロマ取得。インド、タイ、パラグアイで医療活動を行なう。1998年11月より厚生省仙台検疫所長に就任し、2000年にはWHOの派遣要請によりウガンダ現地におけるエボラ出血熱の診療・診断・調査活動に従事。2003年5月SARS対応協議ASEAN+3カ国空港当局者会議、同年6月WHO主催SARS対策専門家世界会議にそれぞれ日本代表として出席。平成19年(2007年)4月仙台市副市長に就任、現在に至る。

■関連記事■
■9/5産経新聞朝刊:「新型インフル、きめ細かく情報を」仙台市副市長講演
■講演映像はこちら
■これまでの朝食会一覧はこちら
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by hpij | 2008-09-25 11:57 | 医療政策関連
「ブレア改革とその後-英国の医療制度改革と日本への示唆」勉強会開催のご報告
                     印刷用のPDFはこちら(日本医療政策機構ウェブサイト)

2008年8月20日、都市センターホテルにて「ブレア改革とその後」と題した勉強会を開催しました。サッチャー政権で拡大した医療に対する国民の不満を解消するべく始まったブレア政権下での医療改革。我が国でも医療政策に対する関心が高まるなか、約200人の方々にご参加いただきました。

■イントロダクション
「主要先進国の医療制度」
小野崎 耕平/日本医療政策機構・ハーバード大学アジアセンター


b0144534_1892986.jpg医療制度の国際比較の類型

各国の医療制度を比較検討するには、総医療費などに着目したマクロ比較や、医療提供体制や診療報酬制度の違いといったミクロ的な比較検討など、さまざまなアプローチが採られています。また「日米比較」のような2国間あるいは、OECD加盟国による多国間での比較検討なども典型的な例です。本日は、英国の医療制度というひとつの事例を検討する前に、これまで行われてきた主要先進国の医療制度の比較研究についていくつかご紹介します。

最初に見ていただくのは、ハーバード大学の医療経済学者ウィリアム・シャオが示した枠組みです。このチャートはシャオが示した軸に私どもが手を加えたもので、主に医療財源と国の価値観をあわせた視点からの各国の比較分析です(下図)。
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左端に「政府中心/平等重視」、右端に「市場中心/階層的」と置いた座標軸に各国をマッピングしたものです。左端には、政府の強いコントロールのもと、おもな財源を税金によってまかなう「政府中心/平等重視」の代表国としてイギリスが置かれています。そして、対局の国は右端に位置するアメリカ。一部に公的保険はあるものの基本的に民間保険中心で、市場原理と個人の選択を重視した国です。アメリカの左隣には、国民も国も「健康は自己責任」という強い価値観をもつシンガポール。医療貯蓄口座(MSA)などはその価値観が具現化したものでしょう。その左側には、社会保険によって財源を確保し、財源はパブリックで、病院等の医療提供はプライベートというミックスタイプのドイツ、日本、東ヨーロッパ諸国、中央ヨーロッパ諸国、ラテンアメリカ諸国が位置します。そして、税のイギリスと社会保険の諸国の間に位置するのがカナダ。この大きな座標軸と各国のポジショニングを頭に入れておくと、本日のブレア改革の話がより理解しやすくなると思います。

医療制度は国民の理念や価値観で決まる

国によって、誰が主体になって医療を提供すべきかという意見も大きく異なっています。2000年に行われた世論調査の結果を引用した資料を用意しました(下図)。

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「医療は政府が責任を提供すべきか」と質問すると、イギリス人は82%が「Yes」で、アメリカ人は33%しか「Yes」と答えない。アメリカは政府不信がきわめて大きな国ですから、国民は国になど任せておけないと思うのでしょう。カナダ人やドイツ人はほぼ意見が半分に別れ、見事に前出の各国のマッピングと一致します。つまり、国の医療制度の国際比較をする時に考えるべき最重要ポイントとは、「国民がどういう医療制度を求めているのか」ということ。医療制度は国民の理念や価値観によって決まる、またそれを抜きにしては語ることができないと言えるでしょう。

医療などの社会保障の政策選択は、「国民がどう生きてどう死ぬかという生き方の選択である」と思います。たとえば日本では、「公平・平等」をベースにあまねく広く医療提供をするという基本コンセプトをもとに制度設計されています。米国は経済力によって受けられる医療に差があるものの、そのかわり先端医療や医療技術には徹底的に投資をしている。医療制度の国際比較するときに「日本は優れているが、アメリカは良くない」などと優劣を論じる傾向がありますが、「好き嫌い」という個人の好みは言えても、「優劣」を断じることはできないはずです。それは、その国の国民の価値判断だからです。

なぜ、いま「ブレア改革」を学ぶのか

医療制度というと、診療報酬だ、家庭医制度だ、臨床研修制度だ・・・と、とかく制度論に議論の焦点が振れがちです。一方で、医療制度は目的のための手段に過ぎません。そして今、日本国に求められているのは、どのような医療を選択するかといった骨太の議論であり、わたくしたち国民がいかに政策決定や政治過程に積極的に参画するかということだと思います。政権選択選挙となる次期総選挙を前に、我々がこの勉強会を企画した理由もそこにあります。いま日本では、医師を増やそう、医療費を増やそうと「医療資源の投入増」に大きく舵を切ろうとしています。まさに大きな転換期ですが、その先行事例がブレア改革であります。イギリスの政治が、政府が、そして国民がどういう選択をして、それがどんな結果をうみだしたのか、ここに集まるあらゆるステークホルダーの皆さんでともに学んで議論したいと思います。

■主講演
「英国医療制度改革と日本への示唆」
富塚 太郎氏/ロンドン大学衛生熱帯医学大学医院・経済政治学大学院


b0144534_16422686.jpg市場原理を導入した結果、医療が荒廃

本日は、1997年にトニー・ブレアが政権をとって後に手がけた医療制度改革についてお話しします。ブレアは、政権奪取後に医療改革に力を入れると宣言し、「Rebuilding the NHS」(意訳すると「NHSをぶっこわす」)のフレーズを繰り返し使いました。イギリスの医療は、ほぼ一般財源の税金で賄われており、その国営の医療サービスはNHS (National Health Service)と呼ばれています。

まず、ブレアが政権をとり医療改革をするにいたる前の医療史に触れます。NHSは1948年に設置されたのですが、それ以前、イギリスで医療保険制度はなかったと言っていい状況でした。保険はあるものの対象者は勤労者のみで、子ども、女性、高齢者は対象外、かなり悲惨な保険制度だったのです。そこで、第二次世界大戦の勝利で得た資金を大量に注ぎ込み、NHSがつくられました。NHSの特徴は、3つ。ひとつは全国民が対象である点。そして、ほとんどの医療がNHSでカバーされている点。3つめは、処方箋料など一部有料のもの以外、原則的に受診料が無料の点です。

1979年に保守党が政権をとり、マーガレット・サッチャーが首相となりました。サッチャー政権とそれにつづくメージャー政権は、「英国病」と国際的に揶揄された状況――不景気で失業率が高く、各種国民の負担も高い経済の停滞状況――を打開する施策の一環として、1980年代後半から医療制度の規制緩和を進め、公的負担を低減し、民間活力を導入する政策をとりました。財政難から英国版「医療費亡国論」が語られるような状況を背景にした改革でしたが、結論としてはうまくいきませんでした。むしろ医療事故の報告が増加し、国民の政府への不信感は募っていきます。

保守党による医療制度改革はいわば市場化の試みだったわけですが、市場化では、医療機関や医療者が利益追求に奔走するという競争原理の悪い側面ばかりが前面に表れ、NHSに込められていたはずの大きな政策目標「健康に関する格差をなくす」は二の次になってしまいました。

競争により生じた医療の質の格差は、貧富の差において顕著でした。65歳未満の冠動脈疾患による死亡率でマンチェスターは西サリーの3倍の数字を記録し、子宮頸がんスクリーニング受診率には地域によって67%から93%までの開きが生まれました。居住地域や貧富の差によって受けられる医療が違う状況となったのです(下図)。
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大胆な医療への公的支出増加策

1997年、ブレアが政権を奪取しました。ブレアは、医療制度改革のために2つの白書を発表。まず、1997年に「The new NHS」を、その白書にもとづいた3年間の活動をもとに2000年には「The NHS plan」を発表しました。彼の改革で注目されるのは、「The NHS plan」で示された改革の2本の柱、「医療への公的支出増加」と「医療従事者の増員対策」です。

イギリスの医療改革においては医療費の増加策を前面に打ち出したことが、きわめて革命的と評価されてます。では、医療費をどれくらい増やしたのか。「The NHS plan」が出された2000年には対GDPで7%以下だったのが、2005年には8.3%に達し、2008年には9.2%となる予想。実額では、1997年の456億ポンド/約9.1兆円から年7%の成長をつづけ、現在は20.8兆円と2倍以上になっています。

さて、以降はブレアの医療制度改革を、「ターゲット政策」、「規制政策」、「患者中心政策」の3つに分けて、もう少し詳しく説明しましょう。

最初にターゲット政策からです。数値目標を設定し、その達成をめざしてなされる政策をターゲット政策と呼びます。ブレア改革においてターゲット政策の優先分野となったのは、「健康の状態」と「医療機関へのアクセス」でした(下図)。
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この政策分野の設定方法が実に注目に値します。保健省主導ながら患者も含めた関係者の合意を得るとともに、財務省の合意も得て経済的な裏づけを確保したうえで取り組む分野を設定しているのです。

「健康の状態」では、がん患者の生存率や心疾患の死亡率の改善が試みられていますが、まだ成果と呼べるようなデータは報告されておらず、今後が期待されます。

「医療機関へのアクセス」では、救急外来での待ち時間4時間以内、家庭医受診48時間以内などの目標が設定されました(資料20P)。それまでは――有名な話ですが――、かかりつけ医としての家庭医にかかろうとしても、1週間後でなければ受診できない状況で、大問題となっていました。さらに、かかりつけ医からの紹介で病院を受診できるまでを13週間以内、入院までを26週間以内などといった目標も掲げられました。これらの目標設定によって、1997年に120万人だった待機患者が2007年には80万人にまで減少。特に6ヵ月以上の入院待ち患者は、2004年末時点で6万6000人だったのが、2005年末には48人と劇的に減りました。

 しかしながら、ターゲット政策には弊害もありました。たとえば「ゲーミング」と呼ばれる“インチキ”があちこちで行われました。例としては、救急コールから8分で救急車が対応すべきと設定すると、もっと早く対応できるケースでも8分かかる現象が起きた。また、救急外来の患者は4時間以内に診療との目標を達成するために、時間内に診られない患者に「救急外来に入らず、外で待っていてください」と言うようになった。さらには、救急車を病院の外に並べて、診療待ち時間のカウントが始まらないようにする現象などがあちこちで起こりました。

公的監査機関を設け医療の質を国が管理

次に規制政策について説明をしましょう。1996~1997年にブリストルの小児病院で心臓外科手術のきわめて高い死亡率が問題になり、15例についてショッキングな原因が内部告発されました。加えて、医師のハロルド・シップマンが殺人を犯し、被害者が200人以上に及ぶ事件も起きました。それらの問題に対してブレア政権は、医療職に質のコントロールが任されていた「医療職“内”での規制」から「医療職“外”からの規制」へと転換を図ります。つまり、国が医療の質に責任を持つことにしたのです。そして、Healthcare Commission(保健医療委員会)とNational Institute for Clinical Excellence(国立最適医療研究所)など、多くの医療の質に関する独立した公的機関が設置されました。

Healthcare Commissionは、病院の目標達成評価をする機関。年に1回、病院の目標達成度評価と患者満足度評価を実施し、目標達成できなかった病院への指導も行います。調査にかかわるスタッフは1600人おり、2004年の設立当初では年間約7870万ポンドの予算がつけられています。

National Institute for Clinical Excellenceは略称であるNICEと呼ばれ、治療や医療機器の評価と推薦、コスト効率分析、エビデンスに基づいた医療情報の提供やガイドライン作成などを行います。2003年の設立当初のスタッフは81人で、年間予算は約1760万ポンドです。

医療機関を選択できる情報源を整備

3つめは、患者中心政策。与えられる医療から、参加する医療に転換し、患者中心の政策を実現しようとしました。具体策のポイントは、(1)患者が十分な情報を持って紹介先医療機関を選択する、(2)患者の医療経験を調査・公表するという2つの点です。

日本はフリーアクセスで、患者が自由に医療機関を選べますが、イギリスでははじめに家庭医/GP(General Practitioner)を受診し、問題があれば病院を紹介してもらうシステム。新しい政策では、その紹介される先の医療機関を患者が複数から選択できることをめざし、選択のために必要な情報が提供される仕組みを整備しました。患者の主な情報入手源は、ウェブサイト「NHS choice」で、医療機関の院内感染率や手術の成績や医療機関評価のレーティングなどが簡単に閲覧可能です。コンピュータを使わない人のためには、情報が掲載された本が図書館にあり、いつでも閲覧できるようになっています。

改革後の患者の意識にまだ変化は見られない

改革の効果を、患者の医療経験調査から考察してみます。この調査は、いわゆる患者満足度調査とは異なり、患者が受診中に経験した具体的な事象や体験の有無を尋ね、集計結果を医療機関に客観的データとしてフィードバックし、改善すべき具体的課題の発見につなげようとするもので、年1回行われます。

実際の調査結果を2つ紹介しましょう。ひとつ目は、「必要なときに、すぐに病院に入院できたか?」(下図)の問いに対する結果。「できた」とする回答は2002年68%が、2006年には74%になっていました。この結果をもってして医療が改善されたと判断できるかは微妙ですが、少なくとも右肩上がりであるのは間違いありません。

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もうひとつは、「治療方針の決定に参加できなかったか?」。ネガティブな設問で、もちろん答えが「はい」の場合、問題であるとなります。プライマリ・ケア医の受診では結果は横ばい、病院においては「はい」が増加しています(下図)。
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これらの結果からは、さまざまな新しい政策を導入したが、残念ながら患者さんの経験にはあまり変化がなかった様子がうかがわれます。また、新しい政策によって医療が変わったか否かを患者の主観として調査する取り組みも行われたのでご紹介しましょう。こちらでも残念ながら、患者さんの主観的な満足度はほぼ変わっていないとの結果。やはり、制度改革の結果が目に見えてくるには、相当の時間がかかるのでしょう。

■コメント
武内和久氏/厚生労働省大臣官房国際課


実にうまい「飴と鞭」の使い方
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3年間にわたって、私が実際にイギリスでブレア改革見て感じたことを3つのキーワードでお話しします。

まず、「戦略と決断」。ブレアが、「NHSプラン」を策定し、10年という時間をかけて改革を進めたこと、そして政治的決断によって年間7%以上の医療費増を決めたことはインパクトがありました。その際、当時のイギリスは、経済が堅調で財政状況がとても良かった点も背景として見逃せません。このように、「求心力」のある改革、「腰を据えた」改革である点は印象深い点です。また、改革構想を描いて行く中では、既存の政治勢力や役所の関与も制限して、ゼロベースで医療政策の問題点を洗いざらい取り出し議論して改革を進めたのも特徴的です。また、10年スパンでの改革について、「インフラ」(量)を整備し、組織を改編し、NHSの文化を変え、それらを通じて「質」の向上を図るという流れが構想された点でも戦略的でした。

2つめのキーワードは、「投資と統制」です。これは、「飴と鞭」と言い換えてもいいもので(笑)、ただ医療費を増やすだけでなく、代わりに医療現場と医療従事者にも求めるべきことをしっかり求めた。そのやり方が、実にうまかったと思います。目標を設定し、達成できなければ――たとえば、救急患者を4時間以内に診られなければ――、医療機関の人事権をちらつかせて間接的なプレッシャーを与えた。その際、地域の医療資源を管理するプライマリケア・トラストの権限を強化し、医療機関へのガバナンスを強化しました。

3つめのキーワードは、「可視化」。ターゲットを設定し、目標が達成できているか否かを定量的に測れるようにしました。Healthcare Commission(保健医療委員会)で医療機関が達成すべき医療の水準、質をしっかり定義づけしたうえで、それらの目標達成度を評価する方式を採り入れたのかその好例です。すべての医療機関の評価が厳密にくだされ、その評価がすべてWebサイト上に公開され、国民が自由に医療機関の特徴と評価を閲覧できる点は驚くべき点です。これも医療者にはかなり大きなプレッシャーとなり、医療機関の人たちのマインドを変えるのに役立ったと思われます。

採点は、構想90点、計画70点、実行50点

政策当局者の視点で見て、感心する点がいくつもあります。たとえば、制度のあちこちに「遊び」の余地を入れている点。ガイドラインをつくると、日本ではガイドラインの9割、10割の遵守率が求められますが、イギリスでは7~8割の遵守率があれば良しとされ、残り3割ほどは現場の判断に任されます。このように現場の裁量の余地を残す点は重要です。

「Try & Error」も頻繁です。イギリスの医療改革では、とにかく次から次にアイデアが出てきて、次から次にアイデアを実行します。パイロット的に一部地域で試してみてうまくいけば全国展開し、全国的にやってみてうまくいかなければ、割に簡単に軌道修正します。とてもフレキシブルな医療政策の進め方は、我々にとってきわめて示唆深いものです。
また、国民の感情に訴えることに非常に意を払っています。ここも本当にうまいなと感じます。たとえば、「患者が医療機関を選択できるようになります」、「患者の意見を反映させます」といった強いメッセージを発信して改革への指示を高めようとの工夫には、まことに感心しました。

NHS改革は成功したのかと問われれば、私の採点では構想90点、計画70点、実行50点。青写真にはすばらしい内容がたくさん盛り込まれていましたが、具体化する段階で削られ、残った施策も、うまくいっているものばかりではありません。
b0144534_1643287.jpgしかし、ブレア政権での医療改革にも「光」と「影」があります。待機時間短縮などで一定の効果を挙げた一方、あまりにドラスティックすぎたようで、医療の現状が改革のスピードについていけない点に深刻な問題があり、イギリスの医療関係者の間では、「改革疲れ」とも言える状況も見られます。今後、ブラウン政権で、現役医師でありながら保健省の政務官に任命されたダルジ氏の手腕が注目されます。
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【日本への示唆】
政治決断で大きな改革の突破口は開けること、そして国民に対するメッセージの出し方など政策実行フェーズでのディテイル(細部)へのこだわりが鍵を握ること、どれも日本にとって大いに参考になるだろう。また、政策過程への市民・患者参画が、実は行政・市民の双方にとってプラスであることも分かる。このような「患者中心政策」(患者中心「医療」と異なることに注意)は、日本の喫緊の課題のひとつであろう。

一方で英国の事例は、単に医療費や医師数などの医療資源の投入量を増やすことだけで解決できるほど「医療再建」の道のりが単純ではないことを改めて考えさせてくれる。医療費増加、医師増を求める声が日増しに大きくなる日本の医療界。しかし、これらの施策はあくまでも目的のためのひとつの手段に過ぎず、決して「バラ色の万能薬」ではないことを再度確認する必要があるだろう。

あらゆるステークホルダーが参画するオープンで健全な議論(Healthy Debate)を重ね、骨太な政策議論とともに小さな改革を根気良く積み上げていく努力が、いま私たち国民に求められている。(小野崎)

■講師プロフィール■
富塚太郎氏
1999年京府医大卒業。北海道家庭医療学センターにて家庭医として地域医療・教育の実践を経て、上医治國を志向し、医療制度・ヘルスポリシーを学ぶために渡英。2008年ロンドン大学衛生熱帯医学大学院・経済政治学大学院医療政策・計画・財政学修士課程修了予定。英国在住。

■関連記事■
当機構小野崎講演資料(日本医療政策機構ウェブサイト・要ログイン)
富塚氏ご講演資料(日本医療政策機構ウェブサイト・要ログイン)
富塚氏ブログ
武内和久氏「英国社会保障」
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by hpij | 2008-09-11 12:17 | 医療政策関連
第18回定例朝食会 「仙台市新型インフルエンザへの取り組み」
9月4日(木)に第18回定例朝食会を開催いたします。

今回は仙台市副市長で医師でもいらっしゃる岩崎恵美子先生をお招きし、「仙台市の新型インフルエンザへの取り組み」について、お話し頂きます。会場を表参道「Cafe hors et dans カフェオール・エダン」に移し、岩崎先生や当機構代表理事黒川と参加者の皆様が、よりインタラクティブにご歓談できるようご用意いたしております。

■第18回定例朝食会「仙台市の新型インフルエンザへの取り組み」■

■日時
2008年9月4日(木)8:00~9:00(7:40より受付開始)

■スピーカー:岩崎 恵美子 氏(仙台市副市長・医師)

■プログラム
8:00 開会
8:05 「仙台市の新型インフルエンザへの取り組み」(岩崎 恵美子氏)
8:35 質疑応答
8:50 代表理事黒川清よりご挨拶
9:00 閉会

■場所
Cafe hors et dans カフェオール・エダン(表参道)
地下鉄千代田線・半蔵門線・銀座線 「表参道駅」A2出口より徒歩2分

■参加申込方法
2008年9月3日(水)までに日本医療政策機構のウェブサイトよりオンラインでお手続
き下さい。朝食の準備の関係上、キャンセルの場合は、お手数ですが前日3日(水)
18:00までに事務局までお知らせ下さいますようお願い申し上げます。前日18時以降
に欠席のご連絡を頂いた方には、恐縮ではございますが会費をご負担頂いておりま
す。
■お申込はこちら

■照会先
特定非営利活動法人 日本医療政策機構 事務局
info@healthpolicy-institute.org

この朝食会はどなたでもご参加いただけます!皆様お誘いあわせの上、ぜひふるってお申込下さい。

■関連記事■
仙台市の新型インフルエンザ対策への取り組み(仙台市ウェブサイト)
「新型インフルエンザ」とは(厚生労働省)
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by hpij | 2008-08-29 14:29 | 医療政策関連
「ブレア改革とその後-英国の医療制度改革と日本への示唆」勉強会へのご案内(受付は終了しました)
この度は「英国の医療制度改革」勉強会ついてご案内させて頂きます。日本で家庭医として地域医療・教育に携わったのち、英国ロンドン大学において医療政策・計画・財政学修士課程を修了予定の富塚太郎氏に、英国における医療制度改革、特に医療危機を経験した90年代のブレア改革の実際とその後、また最近の動向などについて、家庭医制度の話も交えてお話頂きます。

世界各国で行われてきた医療制度改革の中でも、特に注目を浴びてきた英国ブレア政権における改革について学び、わが国における示唆を得たいと思います。なお、このイベントは、医療政策にご関心のある方であれば、どなたでも参加できるカジュアルな勉強会です。皆様のご参加をお待ちしております。

「ブレア改革とその後-英国の医療制度改革と日本への示唆」

b0144534_1128262.gif■スピーカー:富塚 太郎 氏
(ロンドン大学衛生熱帯医学大学院・経済政治学大学院)

■日付:2008年08月20日(水)
■開始予定:19時00分(受付開始 18時30分)
■終了予定:20時30分
■申込締切日:2008年08月18日(月)先着順!
(受付は終了しました)



■参加費用:
 法人会員:無料
 個人賛助会員:1,000円
一般・登録会員:2,000円

■会場:都市センターホテル会議室5F「オリオン」※会場が変更になりました!

■プログラム:
18:30 開場
19:00 「主要先進国の医療制度」 小野崎 耕平 (日本医療政策機構)
19:15 「英国医療制度改革と日本への示唆」 富塚 太郎氏
20:15 質疑応答
20:30 終了 

■講師プロフィール
富塚太郎氏:1999年京府医大卒業。北海道家庭医療学センターにて家庭医として地域
医療・教育の実践を経て、上医治國を志向し、医療制度・ヘルスポリシーを学ぶため
に渡英。2008年ロンドン大学衛生熱帯医学大学院・経済政治学大学院医療政策・計
画・財政学修士課程修了予定。英国在住。

■主催:特定非営利活動法人 日本医療政策機構

■■■この勉強会のお申込はこちら■■■
なお、医療政策分野におけるキャリアや、日本医療政策機構の活動内容にご興味がある方も、是非ふるってご参加ください。当機構説明資料をご用意してお待ちしております。

■関連記事■
富塚氏ブログ
医学書院<寄稿記事>「日本で家庭医療専門医になる」
医学書院<寄稿記事>「医師が学ぶヘルスポリシー」
■日本医事新報【時論】
・No. 4372(2008年2月9日号)
 プライマリ・ケア再考 ─英国家庭医制度から学ぶ(1)
 プライマリ・ケア診療の質追求
 (葛西龍樹、富塚太郎)
・No. 4388(2008年5月31日号)
 プライマリ・ケア再考 ─英国家庭医制度から学ぶ(2)
 家庭医の役割・倫理教育と規制 ─特に医師免許更新制度を巡って
 (富塚太郎、葛西龍樹)
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by hpij | 2008-08-01 18:21 | 医療政策関連
第2回生活習慣病シンポジウムご報告
2008年7月14日(月)、筑波大学と日本医療政策機構は経団連ホール(東京都千代田区)において、シンポジウム「少子高齢化に伴う人口減社会を克服するための健康投資社会の実現を目指して!-医療制度改革がスタートした今、議論すべきこと-」を開催いたしました。生活習慣病対策や健康増進などで先進的な取組みを行っている自治体トップや、イノベーティブなビジネスモデルを構築し展開している国内外の先端企業の皆様によるパネル討論などが行われ、非常に活発な議論が展開されました。

プログラム
※登壇者名:発表順、敬称略

b0144534_1116868.jpg≪第一部≫
12:20 開会挨拶:
 工藤典雄(筑波大学副学長)
12:30-13:40 ミニシンポジウム
「科学的根拠に基づくメタボリックシンドローム予防は、確実な成果が得られる」

■コーディネータ:
 生駒俊明(科学技術振興機構研究開発戦略センターセンター長)
■シンポジスト:
 坂根直樹(京都医療センター予防医学研究室室長)
 久野譜也(筑波大学大学院人間総合科学研究科准教授)

b0144534_11214355.jpg13:50-15:20 シンポジウム1
「首長からみたこれからの地域健康づくり政策のあり方」

■コーディネータ:駒村康平
 (慶應義塾大学経済学部教授)
■シンポジスト:
 中貝宗治(兵庫県豊岡市長)
 久住時男(新潟県見附市長)
 仁志田昇司(福島県伊達市長)
 井崎義治(千葉県流山市長)
 梅原克彦(宮城県仙台市長)
■特別指定発言:黒川清(日本医療政策機構代表理事、政策研究大学院大学教授)

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15:30-17:15 シンポジウム2
「健康投資社会を可能とする健康サービス・イノベーションの課題」

■コーディネータ:
 近藤正晃ジェームス(日本医療政策機構副代表理事)
■シンポジスト:
 松尾嘉朗(大塚ホールディングス取締役)
 大井川和彦(マイクロソフト執行役常務)
 Julie Cheitlin Cherry(インテルデジタルヘルス事業本部アメリカ本社部長)
 窪寺健(NTTデータクリエイション推進部長)
 三木茂(NTTドコモ法人法人ビジネス戦略部長)
 日戸興史(オムロンヘルスケア執行役員)
 小澤正彦(損保ジャパン・ヘルスケアサービス代表取締役社長)
 松田貴夫(アフラック商品開発本部長)
■特別指定発言:生駒俊明 (科学技術振興機構研究開発戦略センターセンター長)
 吉武博通(筑波大学副学長)

≪第二部≫
17:30-19:00 総括基調講演&懇親会
 生駒俊明(科学技術振興機構研究開発戦略センターセンター長)
 黒川清(日本医療政策機構代表理事、政策研究大学院大学教授)
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■協力:インテル / NTTデータ / 大塚製薬 / オムロンヘルスケア / 損保ジャパン / NPO地域交流センター / つくばウエルネスリサーチ / (財)日本ウエルネス協会 (50音順)
■主催:筑波大学/日本医療政策機構

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■第1回生活習慣病シンポジウム
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by hpij | 2008-07-24 18:51 | 医療政策関連