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市民医療協議会と「がん対策」への取り組み
市民医療協議会と「がん対策」への取り組み_b0144534_1640849.jpg市民医療協議会は、市民・患者さん主体の医療を実現するために様々な活動を行っています。特にがん医療について、日本中どこにいても質の高い医療を受けられるよう、力を入れて取り組んでまいりました。

この度、2009年から3年間に渡り、地域発のがん対策を支援するプロジェクトが始動いたします。今回は、がん対策に対する市民医療協議会の取り組みの一部をご紹介いたします。

■インフラ支援:
・がん政策情報センター・ウェブページを開設し、がん対策に必要な情報を提供しています。
・がん対策に中心となって取り組む患者リーダー向けに、アドボカシー・ガイドブックを製作・配布しています。
・市民活動に不可欠のパソコンを無償提供いたしました。

市民医療協議会と「がん対策」への取り組み_b0144534_16385595.jpg■リーダー養成:
・患者会リーダーをはじめとする市民医療リーダーに共通する課題を共に解決していくために、ワークショップを企画、提供しました。(2008年)
・スイスのジュネーブで開催されたUICC(国際対がん連合)「世界がん会議」に患者代表をお連れし、世界のがん対策を学び、参加者と交流していただきました。

■アドボカシー支援:
・全国から、都道府県のがん対策推進協議会(およびそれに該当する会)の患者委員(患者やその家族・遺族など)をお招きし、「がん政策サミット」を実施。本年度も継続してまいります。
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■メディア掲載:
・「知っていますか?あなたの町のがん政策」 (2008/6/4NHK生活ホットモーニング)
・「がん対策推進計画 協議会の委員「患者の声反映」5割」 (2008/6/21日本経済新聞)
・「都道府県がん対策推進協議会の患者代表委員アンケートから 患者代表の意見取り込みに地域格差」(2008/8/26がんナビ)
・「がん政策サミットから 成果上げる官民連携 患者や家族の意見反映」 (2008/10/7、10/21宮崎日日新聞)他多数

■その他外部講演会など:
・「がん対策推進計画:地域から患者の声を発信しよう」
・「がん対策推進計画勉強会 がん対策推進計画って?」
・「がん対策基本法とがん対策~全国の格差と好事例」他多数

市民医療協議会と「がん対策」への取り組み_b0144534_16403189.jpg■関連情報
・がん政策情報センタースタッフ募集
・がん政策情報センターウェブサイト
・日本医療政策機構 市民医療協議会ウェブサイト
# by hpij | 2009-03-17 16:50 | 市民医療協議会関連
日本の医療に関する2009年世論調査
増大する医療ニーズ、ライフスタイルや疾病構造の変化、医療財源の確保、政策決定プロセスにおける市民・患者の果たす役割の増大など、わが国の医療はいま大きな転換期を迎えています。このような中、日本医療政策機構では、国民が求める医療制度や、その根幹となる設計理念を明らかにすべく、2006年から全国の有権者を対象とする世論調査を実施して参りました。
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特に今年は、政権選択選挙となる総選挙の年であることや、最近の雇用・経済情勢が急速に悪化していることなどを踏まえ、1)国民が考える医療政策の緊急課題、2)医療に対する満足度や不安、3)制度選択を含む政策立案に不可欠な情報である「医療費の財源」や「国民の価値観」についての現状、4)これら全ての基盤となる「信頼度」について、特に重点的に聞きました。

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また、制度開始から10 カ月を経た後期高齢者医療制度については、国民世論と政策実行プロセスの関係、メディア報道の影響、制度設計のあり方などについて詳しく知るために、独立した項目を設けて質問を行いました。

■調査結果のポイント
 医療費に不安86%:若者中心に不安広がる-厳しい雇用・経済情勢を色濃く反映
 後期高齢者医療制度-70 代以上で現行制度に最多支持
 医療政策で期待する政党-「期待する政党なし」最多32%、2 位は「民主」17%
 政治・行政に強い不信-「信頼できない」厚労省78%、最低は政党・国会議員84%
調査結果の概要 プレスリリース「日本の医療に関する2009年世論調査(第二版)」概要


■メディア掲載(抜粋)
・「『医療費払えない』86%が『不安』若い世代中心に増加」 2009/2/20 NHKニュース「おはよう日本」
・「後期高齢者医療で民間調査 70代以上が制度を最も支持」2009/2/20 共同通信
・「医療費不安 2年で5割増」2009/2/22 朝日新聞朝刊
ほか全国25以上の媒体で報道されました。

なお、当機構事務局長補佐、医療政策担当ディレクターの小野崎耕平が2月27日(金)に放映された「朝まで生テレビ!激論!ド~する?!医療崩壊」(テレビ朝日系)に出演いたしました。番組では今回の世論調査結果が数多く引用されました。
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# by hpij | 2009-03-05 16:35 | 医療政策関連
第20回定例朝食会「医療の基本に立ち戻る時 ~新年を迎えて」  (黒川清)
日本医療政策機構は、2009 年1 月7 日、第20 回定例朝食会を開催致しました。今回は当機構代表理事黒川清が「医療の基本に立ち戻る時 ~新年を迎えて」と題して医療政策から日本の産業政策まで、さらには黒川自身の「元気の秘訣」も交えて講演させて頂きました。早朝から多数の皆様にご参加頂きました。誠にありがとうございました。

第20回定例朝食会「医療の基本に立ち戻る時 ~新年を迎えて」  (黒川清)_b0144534_11211540.jpg経済の落ち込みが招いた「医療崩壊」の顕在化

最近、「医療崩壊」が流行語にさえなり、いよいよ政治家も動かざるをえない状況になってきました。しかし、医療崩壊は、決して流行語になるような問題でも、昨日今日生まれた問題でもありません。

医療は、経済と密接な関係にあります。バブル経済の頂点であった80年代後半までは、日本は右肩上がりの景気に支えられ、設備投資、インフラ整備、そして医療をはじめとする社会保障などに対する支出をなんの不自由もなく行っていましたが、景気後退とともに対応が困難になってきました。にもかかわらず、医療の受益者である国民は、どうしてもバブルまでの右肩上がりの感覚で医療に期待をし、医療への不満は日々募るばかり。たとえば「モンスターペイシェント」と呼ばれるような現象は、積み上がっていった不満が顕在化したものと言ってもいいでしょう。医療崩壊は、経済の落ち込みと時を同じくして生まれていたのです。

また、高齢化社会を迎えている日本にとって医療や介護は、社会の安定に資するきわめて重要な課題であり、キャピタル、つまり社会的共通資本だとの認識が必要です。加えて雇用の不安が急速に膨らんでいる現在は、医療の重要性は日々増しています。国民一人ひとりが「心配で身動きがとれない」との思いを抱えているのでは、国の未来が明るいものになるはずはありません。

医療におけるアメリカ崇拝は大間違い

私が、ほかに好ましくないと思う最近の傾向のひとつに「アメリカ崇拝」があります。アメリカは先進国の中でもっとも医療制度がうまくいっていない国ではないかと思います。けれども、なぜか医療制度についても「アメリカに学べ」との声が、常にどこかから聞こえてくる。

たとえば海外勤務で数年過ごされた方ですと、医療保険も会社から万全の体制で用意されて赴任されています。そのような環境下で暮らしても、アメリカの医療制度の実際はなかなか実感できないでしょう。もし、アメリカで職を失ってみるか、あるいは低所得者にでもなれば、あの国の医療制度がいかに厳しいか痛感するはずです。 医学や医療の関係者も同様です。留学生や研究員として短期間滞在しただけですと、実際の医療現場を見知る機会は非常に限られています。「アメリカの医療制度はすぐれている」などと安易にいうのは避けなければなりません。

医療制度はヨーロッパを参考に

近ごろようやく、医療制度は「ヨーロッパに学べ」との意見が出るようになりました。

イギリスは、70年代までの「世界に誇る」医療制度がサッチャーイズムで崩壊にいたりました、ブレア政権下で急激に再建を果たしています。そこから、日本が学べることもあるはずです。ブレアの医療制度再建はすべて税金で賄う手法ですが、無闇な税投入を防止する政策評価システムの導入も同時に行っています。刮目すべきは、政策立案や政策に必要なデータ収集、検証が、役所のみならず、さまざまなインディペンデントな機関の関与によって進んでいる点。政策立案、実行プロセスの透明性を、日本はぜひ参考にすべきでしょう。

医療制度に大きな影響を及ぼす医師配置についても同様です。簡潔に言えば、医師配置に関して、ヨーロッパは日本よりも厳格です。ドイツに代表されるように、医師免許を取得した者は、勤務地、開業地も、自由意思だけでは選べない。国内のどの地区に何人の医師を配置するかは基本的に国の管理下にあり、空きが生まれたところには、きちんと医師が投入される仕組みになっています。つい昨日まで「医師は過剰だ」と言われていながら、今日になると「医師不足が問題」と喧伝される日本が見習う点が大いにあると思います。

ちなみに、医療制度の基本理念に基づき、一貫した方針で医師の配置制度を構築している例は、アジア諸国を見ただけでもいくつも確認できます。たとえば、マレーシアやタイでは、医学校を卒業するとまず5年間はへき地に行きます。日本でも、同様の制度を検討し始めてよいのではないでしょうか。

「医療基本法」の制定を
 
最近の医療政策議論やさまざまな検討会の報告書などを見ていると、首をかしげてしまうものも少なくありません。たとえば、「医師を増やす」と言っても、増やした医師をどのように配置するか、あるいは医師の質の維持をどうするかまでは言及されたものは多くありません。医学教育についても、もっとこれまでの取り組みを検証し反省すべきである。医師不足を解決するのに大学医学部の定員数を増やせばいいというのは、あまりに単純です。新たな入学生が医療現場に出るには、10年はかかる。その間は、どうやって不足を補っていけばいいのか。
このような現状を考えると、まずは医療に関して議論する際の基本法の制定も検討すべきだと感じています。基本理念や大原則を定める基本法がないから、ビジョンのない政策になってしまうのです。
 
求められる地域のコミュニティー

かつて安倍政権下で策定された「新健康フロンティア戦略」のような国家の健康戦略を実現するには、地域コミュニティーの再生が必要です。

日本は今、都会、地方を問わず核家族化と少子化が進み、なおかつ高齢者が増えています。結果として何が起こったか?コミュニティーの消失です。コミュニティーが消え、再形成されないがゆえにさまざまな弊害が生まれてきました。たとえば、あらゆる「知恵」が世代を超えて継承されなくなりました。若い親たちは、子どもが夜に発熱しただけでオロオロする。そして病院に駆け込むわけです。もし、子育て経験のあるおじいちゃんやおばあちゃん先達がそばにいて、「これは、様子を見ればいい」、「これは冷やせばすぐ治る」とアドバイスをすれば、病院に行かずとも済むケースが多くあるでしょう。いわゆる「家庭力」が低下してしまったのですね。家庭力の低下を補うには、地域コミュニティーの団結力を高めるのが最も有効だと思います。

地域コミュニティーの団結力をつくる方法のひとつとして、全国に2万2000ある小学校の活用を提言しています。小学生でも自宅から行ける距離にある小学校は、あらゆる人にとって集まりやすいのです。  地域の人たちが、時間が空いたときに小学校に集まる。教師は授業をし、地域の人たちは子どもたちを支える活動をする。共働きの家庭の子は、6時まで学校で予習や復習をすればいい。もちろん部活動をしてもいいし、お年寄りが加わっていっしょに何かをするのもすばらしい。地域に大学があるなら、たとえば学長を筆頭に職員や学生が、地域住民が集う場に年間20時間程度ボランティアで参加することにする。こんな活動をすれば、コミュニティーの輪はいっそう広がるでしょう。

そもそも病院とはどんな存在なのか 

HotelとHospital、Hospitalityの3つの英単語に、何か共通するものを感じませんか?ある識者の見解によれば、病院は医師が誕生する以前からあった概念だそうです。病気は人類発生とともに生じ、医師などいない時代から厳然とあったのですから、まず病人にベッドを提供し、誰かが食事を提供する場所があったに違いない。つまり、Hotelのような施設がHospitality を発揮することで医療が始まり、次いでHospitalが成立したと言うのです。そのような考え方に照らせば、病院で患者をケアする医師や看護師を、単に病院に「勤務する」人材であるとだけ解釈するのは、間違っていると言えないでしょうか。

地域には必ず開業医がいますが、昔のように自宅兼診療所といったスタイルでは開業していません。したがって、夜間に具合の悪くなった家族がいても、連れて行く先がない。必然的に病院には、「病院に行けば、いつでもお医者さんがいる、看護師さんがいる」といった態勢が望まれるわけですが、そうなっていないのですね。どの病院も、「病院の医師や看護師」を「病院に勤務する医師や看護師」だとして扱っています。

また、病院が地域の小児科医と連携して勤務医不在の時間帯を埋めれば、地域の子を持つ親は「あの病院には、いつでもお医者さんがいてくれる」と安心できる。もちろん、産婦人科や外科も同様のやり方で充実させられる可能性があります。「開業したが、十分な施設を整えられなかった」医師には、病院の設備を提供して自身の患者さんの治療をさせてあげればいいではないでしょうか。実は、そうした施設や人員のやりくりは日本以外の国では常識です。

これらのアイデアは、第5次医療計画の骨子に盛り込まれているのですが、残念ながら実現していません。

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大転換を図るべき時代にある日本

医療、社会保障、教育の国家予算は、もっと増やすべきです。現状は、あまりに少なすぎます。となると、問題になるのは日本の経済成長ですが、現在、世界的に金融が傾き、日本にも影響が押し寄せています。しかし、私はむしろここから1年が、長い低迷に沈んだ日本経済を再生させる千載一遇のチャンスだと思っています。

私は以前から、文明や帝国の「rise and fall」は60~70年サイクルだと述べてきました。日本国の歩みを振り返ると、明治維新からここまで、GDPは平均年4%で伸びている。もちろん浮き沈みはあります。ご存知のとおり戦後の日本は驚くべき経済復興を果たしましたが、1900年代はとうとう成長しなくなりました。

今の日本は、まさに明治維新前後、戦後と同じ、大転換を図るべき時代にさしかかっています。サイクル的に考えても、もし、ここでの大転換が果たせなければ、日本の再生はきわめて難しいのではないかと思うのです。

環境産業でリーダーシップを

多くの方に経済、産業の側面から見た「日本の強みは?」と問えば、どんな答えが返ってくるでしょうか。おそらく「ものづくり」という答えが多いのではないかと思います。けれども、それでは答えにはなりません。単なる「ものづくり」、単なる「部品屋さん」では、もはや成長できません。世界のリーダーシップを握れるような産業構想がなければ、これからの日本の経済を成長させることはできないからです。

日本には世界的に評価の高い、すぐれた環境技術があります。しかし、技術が高いだけでは世界レベルでの貢献はできません。必要なのは、世界を視野に入れたグランドデザイン。高い技術力を生かして、いかに世界に貢献するビジネスモデルを構築し、国策として世界市場に乗り出す。大転換を図るための、それが私からの1つ目の提案です。

日本は食料の純輸出国になれる

2つ目の提案は、農業への取り組みです。近年、地球上の食料問題は、深刻な事態になっています。にもかかわらず、日本は総計で埼玉県に匹敵する面積の休耕農地を抱えています。農地を使って穀物をつくり、国内需要を超えた分は輸出すればいい。当面は、付加価値の高いブランド米からでもいいので輸出に転じるべきです。

私の試算では、2020年までに食糧自給率を70%にし、2030年までに100%にすることは可能で、以降、数年もあれば日本は食料の純輸出国になれる。同様にクリーンエネルギーも2020年までに自給率50%、2030年までに自給率100%とし、輸出に転じることができるはずです。それくらいの国家ビジョンがなければ、医療や教育の予算を増やす政策にたどり着くのは困難です。

「日本の強みは?」と問われ、「ものづくり」と国民が即答するような状況はいかがなものか。世界に貢献する日本のイメージをもとに、しっかりとした戦略を持って行動し、発信しない限り近い将来、世界からまったく相手にされず、結果、経済的にも成功できない国になりかねません。

政策も経営も若い世代に託すべし

私は、これまでさまざまなかたちで政策提言にかかわってきましたが、変わらず言いつづけてきたのは、「5年計画、10年計画の政策立案には、45歳以上の者は参加するな」。政策立案だけでなく企業経営に関してもまったく同様です。将来を展望するのに、老重役の意見など盛り込んでもろくなことはありません。

「私たちは先に死ぬ人間である」との認識のもとに、下の世代が夢を持てる社会を構築し、若い人を育て、彼らの新しい視点から生まれた柔軟な意見を政策に反映すべきです。
 
私は、今の日本を幕末の日本に重ねています。ペリーが来航し、国中が大騒ぎになり、いったんは尊皇攘夷が国論となりますが、気づくとみんな開国派になっていた(笑)。悪く言えば信念の欠如ですが、その変わり身の速さは結果的に国を富ませました。振り返れば、日本は、方向さえ決まれば柔軟に変われる国なのです。変われない理由を強弁するのは、一部の守旧派だけ。現代では、団塊の世代がそれにあたるでしょう。私から、団塊の世代の方々へは、「邪魔をしないように」と申し上げたい。「あなたたちの常識は、60年間、黙っていても成長した時代の常識で、もう通用しないのだ」と。

私たちの先祖は、一度徹底的に黒船に締め上げられましたが、結局はそれをバネに明治維新を達成しました。当時のような国を再建するに足るエネルギーが、この日本にまだ埋蔵されているか否か。今、私がもっとも心配していることです。


質疑応答


会場――医学部の4年生です。医療制度の変更について、いろいろ気になります。初期臨床研修が2年から1年になるとか、医学部定員が増やされるなど――。医療現場の現状に即した政策転換であると頭ではわかっているのですが、一方では、医学生が将棋の駒のように扱われる不快感がぬぐえません。

いったい国は、どのような医師を養成しようとしているのでしょうか。

黒川 おっしゃることはよくわかります。役所は、次年度の予算確保しか考えていないので、彼らだけに任せている限り10年先、20年先こうなります、こうしようという話は聞けないでしょう。

初期臨床研修制度の変更について、「新制度のせいで、使いものになる医師が2割減った」などと言い立てる人もいるようですが、そういう人たちは、自分の都合で叫んでいるにすぎません。上に立つ者が、中長期的な将来像を描いて、学生や国民に夢を抱けるようにしなくてはなりません。

研修制度に関しては、今、私は研修医の横断的な組織をつくりたいと考えています。研修を受ける研修医自身の意見を述べられる場があってしかるべきだと思うからです。

会場――黒川先生の、その元気の秘訣をご披露ください(笑)。

黒川――元気の秘訣と問われても――、強いて言えば気になる問題が頭の中にあると、夜中でも起き出して考えたりすることでしょうか(笑)。人間、活発に頭を働かせていると老化が遅くなるものです。

ぜひご紹介したいエピソードがあります。最近、あるサイトで、ある中国人ジャーナリストの書いた文章を読みました。彼は20年ほど日本に暮らしていたそうで、サイトには、だいたい次のように記されていました。

「朝の通勤ラッシュ時のプラットホームで、乗車口の印の前に3列の列ができている。その隣には次の電車を待つ3列が、また隣にはその次の電車を待つ3列が整然と、誰に指示されるわけでもなくできあがっていて、ひとつ目の電車が出て行くと、残った列がズルッとずれていく。エスカレーターに目を転じれば、必ず片側が空いていて、急ぐ人が通れるようになっている。自然と秩序が維持されている状況には感嘆するばかりで、結局、中国は日本に勝てないのではないか。上海や北京に富裕層が生まれてはいるが、とうていそのような振る舞いは中国人には期待できない」と。

日本と日本人には、美しいところや賞賛できるところがたくさんあります。しかし、日本人はいつしか自信を失い、誇るべきものを持っていることを忘れ、結果として次の世代に日本の美徳が引き継がれず、少しずつ美しい国が崩れつつある。そうした日本人の今のありように私は怒っています。

たぶん、私の元気の秘訣は、若さではなく、怒りなんですね(笑)。怒りを収めようとして解決策を考えはじめると、夜、寝ていてもやっぱり目が覚めてしまいます(笑)。
それから、私の年齢を聞いて、びっくりされる方は確かに多いです。しかし、日野原先生とくらべれば、まだまだ足下にも及びませんから(笑)。

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# by hpij | 2009-02-05 10:56 | 医療政策関連
ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院からの訪問
ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院からの訪問_b0144534_18241790.jpg2009年1月、米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院の大学院生の皆様が、日本視察旅行である「Japan Trip」の一環で日本医療政策機構を訪問されました。なお、当機構での海外大学視察団の受け入れは、ハーバード大学公衆衛生大学院(2006年、2007年)に続き2校目となります。

日本の医療制度の現状や特徴、また、日本の国民世論の動向や政策決定プロセスについて、先進諸国との国際比較も交えながらお話しさせて頂きました。

ご参加頂いた学生から、様々なフィードバックを頂きましたので、以下に一部をご紹介いたします。

■「日本医療政策機構の活動に深い感銘を受けました。また日本の医療システムの概観と医療政策の現状についても教えて頂きありがとうございました。」

■「非常に興味深いプレゼンテーションで、日本の医療システムに関する理解が深まりました。」

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# by hpij | 2009-01-27 11:55 | 医療政策関連
【緊急提言】第9回「患者参画の医療政策決定を!」
【緊急提言】第9回「患者参画の医療政策決定を!」_b0144534_1620749.jpg衆議院の解散・総選挙で重要な争点のひとつと考えられる医療政策をテーマに、当機構は医療政策のキーパーソンの方々に「医療政策―新政権への緊急提言」と題したインタビューを行っています。

日本医療政策機構理事
日本医療政策機構市民医療協議会協同議長
がん政策情報センター長
埴岡 健一

【緊急提言】第9回「患者参画の医療政策決定を!」_b0144534_11271615.jpg9回目となる今回は、当機構の理事で、がん政策情報センター長でもある埴岡健一に話を聞きました。
 
インタビューは、下記共通質問項目に沿って行われています。

<質問項目>
1.医療政策における重要課題、政党がマニフェストに盛り込むべきと考える課題は?
2.課題解決を実現するための財源確保の方法は?
3.課題解決のためにご自身が行っている、あるいは行おうとしていることをお聞かせください。
4.日本医療政策機構の今後の抱負は?
*今回だけは当機構理事ですので、いつもの「日本医療政策機構への期待やアドバイスを」の質問を上記に変更しています。
5.我が国の医療政策に必要な、もっとも重要なキーワードなどを「ひとこと」で示してください。



1.医療政策における重要課題、政党がマニフェストに盛り込むべきと考える課題は?

医療基本法成立

日本の医療における最大の問題は、制度が“パッチワーク”状態である点。医療システム全体をどう組み立てるかのグランドデザイン不在の制度が機能不全に陥るのは当然で、グランドデザイン不在の議論が不毛な各論の応酬となるのもまた然りだ。

グランドデザインなきがゆえに医療政策決定には、医療の主役である国民不在の議論がまかりとおり、大枠を決めた後にアリバイづくり程度に意見を聞く手法となる。国民に危機意識がなかった時代なら通用したかもしれないが、現状ではそのようなやり方は許されず、実行段階になってから破綻することは、後期高齢者医療制度の成り行きでも明白だろう。

今こそ必要なのは、医療のグランドデザインを規定した医療基本法である。忘れてならないのは、医療基本法制定の議論が特定のステークホルダーだけで行われてはならないこと。国民代表を参加させ、十分な議論を尽くして成立させるべきだ。

医療政策国民会議(仮称)創設

医療基本法にはいくつかの柱が考えられるが、中でも特に欠いてならないのが、医療政策に関する国民会議的機関の政府への創設。各立場を代表するマルチステークホルダーのメンバーにより、国民のコンセンサスとして政策決定する場、仮に名づけるなら「医療政策国民会議」を設けるのである。

カギとなるのは、患者代表参加の恒常化だ。現行の政府の医療分野における審議会などは医療がどうあるべきか、どのように資源配分をするかというところから議論できず、すでに決まった枠組みの中での議論しかできない側面が強い。

患者代表の参加した議論の有効性は、がん対策基本法の成立とその後のがん計画の策定過程によって証明された。患者の意見が反映されることによって国の議論が活発になり、ついには都道府県にまで波及する。そして、実効性のある政策提言を行うことができる患者や市民の立場の委員が都道府県レベルで育つ。このような現象は、医療政策を推進させる大きな原動力となり、結局のところ行政も政治家も、医療界もハッピー。もちろん、市民の幸福にもつながり、三者間にWin-Winの関係が成立することが実証されつつある。同様の手法は、他の医療分野においても成功をもたらすと確信する。

医療の質の測定

患者や国民が政策決定に参加する際には、公開され共有されたデータをもとにした議論が欠かせない。現状にどんな欠点があるのか、事実認識から意見が違っていては、議論が前に進むはずはない。何をめざすのか具体的に示す羅針盤が個々に違っては、迷走が生まれるだけ。とにかく医療の質を測って状況を比較するベンチマーキングが必要だ。

すでに欧米では、国民的に認知されたベンチマーキングをもとに現状を分析し、将来の目標値を定める取り組みが進んでいる。だが、日本はこの点では、未だはかばかしい動きはない。また、たとえば今、医師不足問題について「数が足りないのか、偏在なのか」との議論があるが、各地の医師などの資源数、疾病数、医療の質の現状といった基礎データに基づいたベンチマーキングなしで医師などの数を増やしても、偏在をさらに助長するだけで、医療従事者の労働条件の改善や医療の質の向上につながらない結果に終わるだろう。

ちなみに日本では、2003年にDPC(診断群分類包括評価)が導入され、多くの病院の診療行為のデータが集計し厚生労働省に提出されている。このデータがすぐれたベンチマークになる可能性を秘めている。現状では、医療コスト削減ツールとの認識が先行しているが、本来は医療の質を測る道具として大きな潜在力を持っているツールだ。日本の医療の質計測は欧米から2周、3周遅れてしまったが、DPCデータの活用次第では遅れを取り戻せる可能性もある。

医療の質・監視システムの構築

広い範囲で医療の質が測れるようになれば、医療の質が向上し、医療の安全性も向上し、無駄な医療費も削減できる。それぞれどの程度の改善を達成するかの目標も立てられるようになるだろう。そこで、提言したいのは、医療費の1%――総医療費35兆円なら3500億円――を予算にして運営する、医療の質・監視システムの構築である。この規模の予算があれば、公的な「医療の質安全局」のような組織もつくることができるだろう。

すでに欧米には、そうした機関が設置されている。たとえば、米国の政府機関である「医療研究品質局(Agency for Healthcare Research and Quality:AHRQ)」は、患者の安全と質の向上とって有効で科学的な情報を集積する。英国にも、臨床ガイドラインの制定や標準治療順守率の向上促進に取り組む「国立保健医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence:NICE)」や、インシデント情報を収集して事故予防策を普及させている「国立患者安全機構(National Patients Safty Agency: NPSA)」などがある。

3500億円もの予算を投じる必要があるのかとの異論もあろう。しかし、結局は医療全体の劇的な効率化をもたらすシステムになるに違いない。

コールセンターの設置

国民は、健康に関してさまざまな不安を抱え、医療制度について多くの疑問も持っている。これまでは、質問や疑問を投げかけるところもなく、それが医療不信を深めてきた側面が大いにある。国民には、365日24時間、電話で相談し、意見を述べる場が必要だ。

もちろんセンターへの連絡方法にインターネットを加えてもいい。より利用しやすいシステムになるだろう。健康不安へのカウンセリングは、国民の健康教育になる。相談員やピアサポーターもたくさん育成する。医療制度への不満を述べる機会を与えることは、医療への国民参加を促すことでもある。

英国では「患者国民参加(Patient and Public Involvement :PPI)」という考えのもと、英国国立保健サービス「National Health Service:NHS)の病院運営に患者・市民代表の参加が義務付けられている。また、NHSダイレクトと称するコールセンターが稼働、電話による医療相談などを受け付けている。NICEがガイドラインの情報提供をしていることと相乗効果を生んでいるそうだ。

英国を参考にし、まず官主導でコールセンターと不随する情報提供システムをスタートさせ、軌道に乗った後に民営化する。そのような手順が理想的だろう。

2.課題解決を実現するための財源確保の方法は?

保険料

患者会の集まりなどで、「医療の質の向上がそれで実現されるならば、保険料の50%増や消費税の10%への引き上げに賛成し、自分の負担増を受け入れるか」とよく質問する。いつも、参加者の9割が賛成を表明する。患者は医療費の拡大に大いに賛成である。では、拡大の財源は税金か保険料か。個人的な見解だが、私は、2つの理由で保険料を主体とすべきと考える。

まず、税金を上げても社会保障に回る保証がない。社会保障に充てられても年金中心となって医療には回らない可能性が強い。

次に、税金で医療費をまかなうのでは、自分の負担と医療サービスの給付を結びつけて考えにくく、医療に関する国民の自覚を促せない。健康保険に関し、保険料を払っている国民の「おらが保険」「自分たちの相互扶助システム」という意識を高めることが重要だ。そのためには財源は保険料を中心とし、自分たちの健康保険がどんな財政でどのように使われているか、分かるような情報を提供することが大切だ。

保険料引き上げには、国民の納得を得ることが前提だが、現状の保険運営は不透明でわかりづらい。国民参加によって改善することがきわめて重要となる。そのためには、健康保険の運営を保険料を納めている加入者や患者が主導となるようにすることが欠かせない。国民は健康保険システムの当事者の中で「被保険者」と呼ばれるが、そのような概念も変えるべき。保険でカバーされている人である前に、保険料を払うという保険システムのオーナー的な立場にあるはずだ。また、保険によって提供される医療サービスの顧客の立場にもある。保険は患者のもの、国民のものであるといった意識を芽生えさせることが、負担と給付の問題を解決するための、遠い道のりのようで結局は一番の近道ではないか。もちろん、負担力がない人への対応は別途必要となる。

「医療の質の問題や、医療費の無駄がこれだけある。一方で必要な医療資源と費用はこれだけ。それを実現すれば、どれだけの改善ができる。だから、医療費を増やしてそれを実行させてほしい」。医療界が、そのように真摯に訴えれば国民は聞く耳を持っている。今のように、「医療の内実ははっきり見せない。でも、足りないのだからお金がほしい」というスタンスでは、広い国民からの納得が得にくいだろう。

3.課題解決のためにご自身が行っている、あるいは行おうとしていることをお聞かせください。

がん対策でモデルづくりを

まず、がんをテーマにさまざまな施策を実現すべく取り組んでいる。たとえば、がん政策情報センタープロジェクト。がん治療の地域格差や医療機関による治療レベルの格差の存在を明らかにし、格差解消のための好事例、ベストプラクティスを共有し、医療改革に取り組む熱心な人々の人的ネットワークを形成すれば、均てん化(どこでも高いレベルの医療が提供される)が図れるだろう。また、各都道府県で政策提言をする患者関係者、すなわち「がん患者アドボケート」の育成を支援している。こうしたアドボケートが各地の対策の活性化の起爆剤となりつつある。がん分野のモデルをきっかけに、ほかの疾病においても同様な活動が起きてくれればと期待している。

患者の声を政策に反映させる仕組みづくり

2007年9月からの助走期間を経て2008年7月に「患者の声を医療政策決定に反映させるあり方協議会」が、10の患者会を中心に作られた。疾病横断的な患者団体が緩やかに連携する場と位置づけている。英国では、慢性疾患の患者会を横断的にまとめた組織があり、患者約1700万人を束ねていると標ぼうし、医療政策に関する提言をし、政策決定にも強い影響力を持っていると聞く。日本でも、同様の組織ができればすばらしいことだと思う。日本医療政策機構の市民医療協議会もこの趣旨に賛同して設立メンバーとなっており、私は初代の事務局長を務めている。

医療政策立案にかかわれる人材育成

4年前に、東京大学に「東京大学医療政策人材養成講座(HSP)」が設けられた。マルチステークホルダーが一緒に医療政策の提言を作成することで、政策立案プロセスにかかわることができる人材の育成を目的としている。私は立ち上げ期からのスタッフだ。医療従事者、患者支援者、政策立案者、メディアなどの異なるステークホルダーが集まり、共に質の高い政策提言や医療改革の実践をする人々が、この場をきっかけにたくさん育ってきていると感じている。

医療改革推進に向けた民間基金の育成

国や地方自治体は、地域の医療計画を実施し、医療の均てん化を実現するため、優先的に予算を配分すべきだ。一方で、こうした公的な資金とは別に、医療改革を促進するための民間の資金プールも必要だ。ファンドレイジング(資金調達)で寄付などを集め、地域の医療対策に資金を投入していくという発想が大事になってくる。そして、その資金によって患者・市民、行政、医療施設・医療従事者、県議会議員・市議会議員、地元メディアなどが協力してプロジェクトに取り組んでいく…。

日本医療政策機構の市民医療協議会としてもそうしたことに取り組んでいきたい。また、各地で地元のための医療対策基金が設置され、資金規模が5億円、10億円と育っていけば、現在の地方自治体の医療対策予算の規模に比べてもそん色ない大きさとなってきて、地域医療を大きく変える可能性が出てくる。

自分たちの医療を行政に任せきりにせず、あえてみんなで資金を集め、政策の立案と実行に声も出して汗もかく。そういう中から生まれた成功事例は、これまでとはまったく違う医療政策のあり方を示すはず。

4.日本医療政策機構の今後の抱負は?

第2フェーズへ向けた活動の拡大

当機構も誕生して4年がたち、そろそろ第2フェーズに入る時期。医療に関する民間シンクタンクへの期待と役割は大きいが、まだまだその役割を十分に果たしてはいない。もっと、さまざまなプロジェクトが実施できる人材と資金などを集め、組織を充実し、掲げたミッションに則して積極的な活動を行って結果を出していかねばならない。成長の過程では、多少の失敗や学習も予想されるが、前向きに進むことが必要な段階だと認識している。

目標の設定と達成度の評価
 
「政策は戦略的に立てるべき」、「政策は評価されなければならない」。われわれが行政向けに常々発するこうした言葉は、自分たちにも向けられる。われわれ自体が目標をもっと明らかにし、戦略的にそれを達成する活動をし、評価が可能な方法で成果を説明しなければ、行政の医療政策を批評する資格が疑われかねない。

やっている活動とその結果をもっと分かりやすく説明し、支援してくださる方々にも納得し喜んでいただくことで、さらに支援者を増やしていきたい。

5.我が国の医療政策に必要な、もっとも重要なキーワードなどを「ひとこと」で示してください。

患者参画の医療政策決定を!【緊急提言】第9回「患者参画の医療政策決定を!」_b0144534_11373429.jpg

先に、患者会メンバーなどは、「医療の充実のために保険料の50%増や消費税の10%への引き上げ」に9割が賛成を表明すると述べた。医療者の集まりで同様の質問をすると、やはり9割が賛成する。ところが、新聞などの世論調査では、同様の質問への賛成は非常に少ない。


つまり、世論を前にすれば、患者も医療者も等しくマイノリティなのである。前者は疾病に苦しみ、医療制度の不備に苦しんだ経験から。後者は医療の現場にさまざまな矛盾があると、知るがゆえ。いずれも、経験から負担と給付に関する政策転換が必要だと認識し、大多数の国民の無関心に頭を抱えているという共通性がある。社会のステークホルダーの中で、もっとも似た基本方針を描くセクター同士といえるかも知れない。この両者がもっと協力・連携して、提言を発信しなければ医療は変わらない。その際、なかでも特に患者の役割が大きいと、私は考えている。

患者委員が積極的に発言している審議会や検討会を見ていて感じることがある。医療界や行政などのセクターを背景にしたメンバーは、出身母体の利害に関する発言が多くなる。また、パイの奪い合いの発想が強いと感じることもある。一方で、患者・市民の立場の委員は、問題解決と目標達成のために、包括的な提言をすることが多い。また、医療資源を増やす可能性はないかと、議論はパイそのものにも及ぶ。議論全体を目的などの基礎から包括的にし、かつ具体論も結果の実現性などの視点を踏まえている。会議の議論の方向と整理をリードしていると思えるときが少なくない。

政府や役人や医療従事者の言葉を信用しない国民も、患者の発言には耳を傾けやすいだろう。患者が家族に、さらにはコミュニティのメンバーに、自己の体験に基づいてあるべき医療政策を話して聞かせる行為は、地道ながら社会の医療への意識を向上させるには、もっとも効果的な手法だと思う。

医療についての議論への国民の関心を高め、医療に関する制度づくりに国民を参加させる鍵は、患者が握っている。その意味において、行政は医療政策決定の場に患者を参画させるべきだ。それが、結果的には政策の決定事項に対する国民の合意と納得につながるし、閉塞感が漂う医療分野において斬新な政策が実現できる道筋なのだ。

■略歴
埴岡健一
1984年、大阪大学文学部卒業。1987年、日経BP社(現)入社、日経ビジネス編集部記者、92年日経BPビジネスニューヨーク特派員、94年ニューヨーク支局長、98年日経ビジネス副編集長と、経済・経営ジャーナリストとして記事を執筆する。99年骨髄移植推進財団(骨髄バンク)事務局長となり、医療システム改革に取り組んだ。03年7月日経メディカル記者、04年7月同編集委員。がん患者支援サイト「がんナビ」の編集長も務めた。04年8月東京大学医療政策人材養成講座特任准教授、日本医療政策機構理事。07年4月、がん対策推進協議会委員となり、がん対策戦略策定に参加。08年10月、全国健康保険協会運営委員会委員。

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「緊急提言」シリーズはあらゆる分野の方々に幅広いご意見を伺うこととしております。当シリーズでインタビューにお答え頂いた方のご意見は、必ずしも当機構の見解を代表するものではございません。
# by hpij | 2009-01-16 16:46 | 新政権への緊急提言